
鏡を使ったお呪いや都市伝説は沢山ありますが、ほとんどが呪われる、命を奪われる、死神や悪魔が出てくるといった恐ろしいものが多いように思います。特にやってはいけないお呪いの一つとして合わせ鏡がありますが、あれは奇妙な空間や異次元が生み出されてしまうといいます。鏡には異世界へ通じる秘めた魔力がこもっているのかもしれません。そんな鏡を使って異世界に行こうとしたスレ主は――。
1: 怪談@おーぷん◆DPkOkPvi9o 2015/04/10(金)00:57:52 ID:Jpn
鏡って使ったことある?
光の反射を利用して自分の姿をみることができるっていう、まあ便利なものだ。
きっと文化的な生活を送ってれば一度と言わず何度も使うことだろう。
でも、一方で恐怖の題材にされることも多い。
例えばMの鏡だとか、鏡の中の悪魔だとか。
小さい頃の俺は丁度Mの鏡が大流行してる時期で見るのが怖くて怖くて仕方なかった。
とりわけ学校の鏡は怖くて見れなかった。
マジックミラーなんてものがあるらしいし、
向こうから誰かが覗いてるんじゃないか――なんて妄想してしまってな。
もっとも、こんなこと誰にも恥ずかしくて言えたものじゃない。
当時高校生だったこともあり、変に意地っ張りなのも相まって、友達にすら言えなかった。
絶対馬鹿にされるに決まってるし。
そんなある日、悪友の田中と斎藤と一緒に学校に遅くまで残ってたんだ。
近々文化祭があるってことでクラスで出し物をすることになってたんだけど、
俺たちの担当分だけ遅れてたんだ。
まあ、居残りをしても真面目に仕事するとは限らないわけで――
斎藤がトイレから帰ってくると、担当分に手もつけずにぶしつけに訊いてきた。
光の反射を利用して自分の姿をみることができるっていう、まあ便利なものだ。
きっと文化的な生活を送ってれば一度と言わず何度も使うことだろう。
でも、一方で恐怖の題材にされることも多い。
例えばMの鏡だとか、鏡の中の悪魔だとか。
小さい頃の俺は丁度Mの鏡が大流行してる時期で見るのが怖くて怖くて仕方なかった。
とりわけ学校の鏡は怖くて見れなかった。
マジックミラーなんてものがあるらしいし、
向こうから誰かが覗いてるんじゃないか――なんて妄想してしまってな。
もっとも、こんなこと誰にも恥ずかしくて言えたものじゃない。
当時高校生だったこともあり、変に意地っ張りなのも相まって、友達にすら言えなかった。
絶対馬鹿にされるに決まってるし。
そんなある日、悪友の田中と斎藤と一緒に学校に遅くまで残ってたんだ。
近々文化祭があるってことでクラスで出し物をすることになってたんだけど、
俺たちの担当分だけ遅れてたんだ。
まあ、居残りをしても真面目に仕事するとは限らないわけで――
斎藤がトイレから帰ってくると、担当分に手もつけずにぶしつけに訊いてきた。
「なあ、そういえば何でウチの学校って2Fのトイレに姿見鏡あんの?」
「なんだ不躾に。てか手を動かせよ。お前の分まではやらねーぞ」
「うっせ。このくらいの雑談いいじゃん、なあ田中?」
「俺に振るなよ。てかボチボチ俺は終わるんだけど」
「はぁ!?この裏切り者!俺に隠れて進めてやがったな!」
「トイレにこもってるお前が悪い。>>1ももうそろそろ終わるぞ」
「なあ、>>1、俺の分手伝って――」
「はやらんから安心しろ斎藤?」
笑顔で威圧すると、渋々自分の分をこなし始める斎藤。
一方、ボチボチ自分の分が終わりそうな俺と田中は気楽なものだ。
まったり進めつつ、軽く雑談を交えたりする。
まあ、結局二人が雑談をすれば斎藤も混ざってくるわけで。
進捗状況芳しくなく、仕方なく二人で斎藤の手伝いをしていると、話が姿見鏡にもどっていた。
「そいえば、斎藤よ。なんで今更姿見鏡?見慣れてるってもんだろ」
「ん?あー、いやさ。ふとションベンしてた時、気になってな。
トイレに鏡って付き物だけどさ。
でっかい姿見鏡を入口の真正面に置いてるのなんてウチの学校くらいだろ?」
「あー、確かに>>1とか最初の頃はよく戸惑ってたよなぁ。「ひぃ!」なんて叫んで」
「あ、あの話はもういいだろう……」
田中の奴がウシシと笑う。
何が面白いのか。こちとら入学そうそうトイレに入ったら混乱した上に驚いたというのに。
でも、確かに言われてみれば姿見鏡がトイレにある学校というのも珍しいかもしれない。
理由をあれこれと考えていると、田中が思い出したかのように話しだした。
「そういえば、この前部活の先輩が話してたけど、あの鏡は別の世界に繋がってるらしい」
斎藤と二人で冗談かと思って聞き流していると、田中の奴は真顔。
どうやら本気らしい。
「あれ?田中ちゃんってそんなキャラだっけ?」
「ちゃん呼びはやめろよ」
「でも、なぁ?」
「ああ、俺ら高校生だぜぇ?」
正直、とても信じられる話じゃない。この21世紀、文明社会なご時世だ。
超能力者はマジシャンで、心霊写真は手ブレや合成。
そんな中、異世界に繋がる鏡なんてオカルトだ。
もっとも、笑いつつ紫鏡を怖いと感じる実はノミの心臓。
話題を変えたくて仕方なかった。
でも笑われた田中は気に食わないのだろう。
突飛もないことを言い出した。
「お前らがそこまでいうなら分かったよ。じゃあ今夜肝試ししようぜ?」
田中いわく、午前3:30に姿見鏡の前に立つと異世界につながるらしい。
正直、夜遅くまで起きるの嫌だし、
何より深夜に鏡の前とか怖くてチビりそうで行きたくなかったが――
「おう、いいぜ!!」
止めるより先に斎藤が返事をしてしまった。
こうなると逃げるわけにもいかず、仕方なく俺も行くことにした。
そして午前3:25。
嫌々ながら懐中電灯ともしもの為の防犯スプレー、
あと少量の食料をバッグに忍ばせ、俺たちは校舎2Fトイレの姿見鏡の前にいた。
校内は定期巡回の教師がいるが、今日は面倒くさがりで有名な教師。
文化祭近くということもあり気が緩んでいるのか来る気配はなかった。
そのせいか校舎は異様に静まり返り、トイレはひんやりと冷たい空気。
ほのかにするアンモニア臭に三人してしかめっ面をしていると、
田中がノートを取り出しボソボソと何か言い出した。
どうも念仏?みたいなものらしく、書いたのを音読しているらしい。
こういうのは素人なのだろうが、
やけに様になっていて田中のハスキーボイスが怖さを引き立てる。
一方、斎藤はといえば対照的に携帯を弄りつつ、あくびを噛み殺していた。
そして念仏が読み終わると同時に訪れる3:30。
ボ―ン ボ――ン ボ―――ン
やけに間延びした鐘の音と共に、姿見鏡が少しボヤける。
一瞬の立ちくらみの後、気づくとトイレの床に突っ伏していた。
「うっ、いっつ!」
立とうとすると、軽い頭痛が起こる。
きっと二人共おなじ状況なのだろうと思い、何気なく周囲をキョロキョロと探す。
大便用の個室、小便用の便器、洗面台――
どこを見ても、二人の姿はない。
そして何より一番不自然なのは――
「なんで鏡、ないんだ?」
俺はついさっきまであったはずの場所を呆然と見ていた。
まるで鏡なんて最初からなかったかのように、そこはタイル張りの壁だ。
近づいて触っても、叩いても、それは変わらない。
正直、頭が混乱してきていたが、きっと二人のイタズラに違いないと思い直し、探しにいくことにした。
廊下に出ると、シーンと静まり返っている上に明かり一つついていない。
窓から外をみると、まるで黒い絵の具を塗りたくったように、
月もなにもない漆黒の空が広がっている。
見えるものといえば、学校の外に通っている一本の大きな道?らしきもの。
その道だけは街灯があるようで所々ボンヤリと明るくなっていた。
少なくても、俺の学校の前に大きな道なんてないのにだ。
ふと田中の話が頭をよぎる。
『あの鏡は別の世界に繋がってるらしい――』
嫌な予感がして、慌てて学校中を探し回る。
まさか、そんなはずはない。絶対ない。
だって、ただ鏡を見ただけで異世界にいけるだなんて、あるはずがないだろ?
でも、探せば探すほど不自然なことばかり。
教室が『1-A』とか『2-B』から、『壱-あ』や『弐-い』に。
職員室のあった場所が『食飲室』に。
体育館が道場のような純日本風に。
そして何よりおかしかったのが――
「視触町立 視触高等学校……」
俺は、学校中を探し回り。声を枯れるほど二人の名前を呼び、そして校門で膝を折っていた。
しらない学校だ。聞いたこともない地名、見たこともない場所だ。
そう、ここは――別世界。
もう頭がおかしくなりそうで、どうしたらいいかもわからなくて、
頭をかきむしりながら校門前で膝を抱えていた。
どれくらいの時間がたっただろう。
不意に遠くからサイレンの音が聞こえてくるのに気付いた。
それもだんだん近づいてくるような気がする。
なんだか無性に怖くなって、慌ててその場を逃げ出す。
勿論校舎になんて戻れない。
だって、ここは俺の学校じゃない。絶対に俺の知っている学校じゃない。
きっと、何かの拍子で手違いでいたに違いないのだから――
がむしゃらに大きな道を走る。
汗がふきでて、足がジンジンと傷んでも、それでも立ち止まれない。
こんな場所一刻も早く逃げ出したい。
でもどこまで行っても道は真っ直ぐで。
対向車も、追い抜く車もなくて。
ただただ、段々とサイレンの音だけが近づいてくる。
やがてサイレンは背中からするようになって、恐る恐る振り向くとそこには――
「そこの学生、止まりなさい!こんな夜更けに何やってるの!!」
白と黒のラインで配色されたパトカーがきていた。
途端に、緊張が緩んで倒れこむ。
「ちょっと、君大丈夫!?」
もう体も精神の限界で立てずにいると、パトカーから一人の警官が降りてきた。
こっちに来るとき、何度か車に戻っている様子からすると、もうひとりぐらいいるようだ。
ともあれ、警察さえいればなんとかなる。
すがりつくように警官に話を始める。
ここはどこなのかということ。
どうしてこんなことになったのかということ。
そして、どうにか元の場所に返して欲しいということ。
きっと上手く話せていなかったんだと思う。
けど、やけにこなれた感じで警官は答えたのだった。
「あー、君もアッチの人か」
「あっちの…ヒト…?」
「あー、こっちの話。にしても最近は多くてねー、君なにしたの?」
めんどくさそうな警察の態度に軽くキレそうになる。
こっちはそれどころじゃない。
でも、逆にその態度が少し冷静さを取り戻させてくれて、なんとか経緯を説明する。
斎藤のこと、田中のこと、二人がいなくなったこと――全て包み隠さず話した。
それを聞いた上で警察の人はパンと手を叩くといった。
「何はともあれ、君は無事で良かった。
今はちょっと混みいってるんだけど――まあ、歩くのも大変でしょ?パトカーで送るよ。」
正直、このまま放置されるよりはずっとマシだ。
俺は二つ返事で答え、パトカーに向かう。
斎藤と田中のことは気になったが、
聞くと「いいから」とのことで、きっとなんとかしてくれるに違いないと思った。
そして、送ってもらっていると、不意に強い眠気が襲ってきた。
ウトウトしていると、車を運転しながら警官がぼそりと呟いた。
「運がいいやつ――」
気づくと、俺は自室の布団の中にいた。
どうやら、寝ている間に家まで送ってくれたらしい。
でも、翌日家族に聞くと「そんなことはなかった」という。
首をかしげつつ、翌日も学校に登校すると――トイレから姿見鏡はなくなっていた。
いや、それよりも重要なことがある。
クラスメイトに聞いても、先生に聞いても、そして親に確認しても――
斎藤と田中なんてやつは、いないというのだ。
でも、しっかり俺には記憶がある。
三人で文化祭の居残りをした記憶が。
そして何より、トイレに行くたびに気になることがある。
小さなネジの跡が残っているのだ。
「なんだ不躾に。てか手を動かせよ。お前の分まではやらねーぞ」
「うっせ。このくらいの雑談いいじゃん、なあ田中?」
「俺に振るなよ。てかボチボチ俺は終わるんだけど」
「はぁ!?この裏切り者!俺に隠れて進めてやがったな!」
「トイレにこもってるお前が悪い。>>1ももうそろそろ終わるぞ」
「なあ、>>1、俺の分手伝って――」
「はやらんから安心しろ斎藤?」
笑顔で威圧すると、渋々自分の分をこなし始める斎藤。
一方、ボチボチ自分の分が終わりそうな俺と田中は気楽なものだ。
まったり進めつつ、軽く雑談を交えたりする。
まあ、結局二人が雑談をすれば斎藤も混ざってくるわけで。
進捗状況芳しくなく、仕方なく二人で斎藤の手伝いをしていると、話が姿見鏡にもどっていた。
「そいえば、斎藤よ。なんで今更姿見鏡?見慣れてるってもんだろ」
「ん?あー、いやさ。ふとションベンしてた時、気になってな。
トイレに鏡って付き物だけどさ。
でっかい姿見鏡を入口の真正面に置いてるのなんてウチの学校くらいだろ?」
「あー、確かに>>1とか最初の頃はよく戸惑ってたよなぁ。「ひぃ!」なんて叫んで」
「あ、あの話はもういいだろう……」
田中の奴がウシシと笑う。
何が面白いのか。こちとら入学そうそうトイレに入ったら混乱した上に驚いたというのに。
でも、確かに言われてみれば姿見鏡がトイレにある学校というのも珍しいかもしれない。
理由をあれこれと考えていると、田中が思い出したかのように話しだした。
「そういえば、この前部活の先輩が話してたけど、あの鏡は別の世界に繋がってるらしい」
斎藤と二人で冗談かと思って聞き流していると、田中の奴は真顔。
どうやら本気らしい。
「あれ?田中ちゃんってそんなキャラだっけ?」
「ちゃん呼びはやめろよ」
「でも、なぁ?」
「ああ、俺ら高校生だぜぇ?」
正直、とても信じられる話じゃない。この21世紀、文明社会なご時世だ。
超能力者はマジシャンで、心霊写真は手ブレや合成。
そんな中、異世界に繋がる鏡なんてオカルトだ。
もっとも、笑いつつ紫鏡を怖いと感じる実はノミの心臓。
話題を変えたくて仕方なかった。
でも笑われた田中は気に食わないのだろう。
突飛もないことを言い出した。
「お前らがそこまでいうなら分かったよ。じゃあ今夜肝試ししようぜ?」
田中いわく、午前3:30に姿見鏡の前に立つと異世界につながるらしい。
正直、夜遅くまで起きるの嫌だし、
何より深夜に鏡の前とか怖くてチビりそうで行きたくなかったが――
「おう、いいぜ!!」
止めるより先に斎藤が返事をしてしまった。
こうなると逃げるわけにもいかず、仕方なく俺も行くことにした。
そして午前3:25。
嫌々ながら懐中電灯ともしもの為の防犯スプレー、
あと少量の食料をバッグに忍ばせ、俺たちは校舎2Fトイレの姿見鏡の前にいた。
校内は定期巡回の教師がいるが、今日は面倒くさがりで有名な教師。
文化祭近くということもあり気が緩んでいるのか来る気配はなかった。
そのせいか校舎は異様に静まり返り、トイレはひんやりと冷たい空気。
ほのかにするアンモニア臭に三人してしかめっ面をしていると、
田中がノートを取り出しボソボソと何か言い出した。
どうも念仏?みたいなものらしく、書いたのを音読しているらしい。
こういうのは素人なのだろうが、
やけに様になっていて田中のハスキーボイスが怖さを引き立てる。
一方、斎藤はといえば対照的に携帯を弄りつつ、あくびを噛み殺していた。
そして念仏が読み終わると同時に訪れる3:30。
ボ―ン ボ――ン ボ―――ン
やけに間延びした鐘の音と共に、姿見鏡が少しボヤける。
一瞬の立ちくらみの後、気づくとトイレの床に突っ伏していた。
「うっ、いっつ!」
立とうとすると、軽い頭痛が起こる。
きっと二人共おなじ状況なのだろうと思い、何気なく周囲をキョロキョロと探す。
大便用の個室、小便用の便器、洗面台――
どこを見ても、二人の姿はない。
そして何より一番不自然なのは――
「なんで鏡、ないんだ?」
俺はついさっきまであったはずの場所を呆然と見ていた。
まるで鏡なんて最初からなかったかのように、そこはタイル張りの壁だ。
近づいて触っても、叩いても、それは変わらない。
正直、頭が混乱してきていたが、きっと二人のイタズラに違いないと思い直し、探しにいくことにした。
廊下に出ると、シーンと静まり返っている上に明かり一つついていない。
窓から外をみると、まるで黒い絵の具を塗りたくったように、
月もなにもない漆黒の空が広がっている。
見えるものといえば、学校の外に通っている一本の大きな道?らしきもの。
その道だけは街灯があるようで所々ボンヤリと明るくなっていた。
少なくても、俺の学校の前に大きな道なんてないのにだ。
ふと田中の話が頭をよぎる。
『あの鏡は別の世界に繋がってるらしい――』
嫌な予感がして、慌てて学校中を探し回る。
まさか、そんなはずはない。絶対ない。
だって、ただ鏡を見ただけで異世界にいけるだなんて、あるはずがないだろ?
でも、探せば探すほど不自然なことばかり。
教室が『1-A』とか『2-B』から、『壱-あ』や『弐-い』に。
職員室のあった場所が『食飲室』に。
体育館が道場のような純日本風に。
そして何よりおかしかったのが――
「視触町立 視触高等学校……」
俺は、学校中を探し回り。声を枯れるほど二人の名前を呼び、そして校門で膝を折っていた。
しらない学校だ。聞いたこともない地名、見たこともない場所だ。
そう、ここは――別世界。
もう頭がおかしくなりそうで、どうしたらいいかもわからなくて、
頭をかきむしりながら校門前で膝を抱えていた。
どれくらいの時間がたっただろう。
不意に遠くからサイレンの音が聞こえてくるのに気付いた。
それもだんだん近づいてくるような気がする。
なんだか無性に怖くなって、慌ててその場を逃げ出す。
勿論校舎になんて戻れない。
だって、ここは俺の学校じゃない。絶対に俺の知っている学校じゃない。
きっと、何かの拍子で手違いでいたに違いないのだから――
がむしゃらに大きな道を走る。
汗がふきでて、足がジンジンと傷んでも、それでも立ち止まれない。
こんな場所一刻も早く逃げ出したい。
でもどこまで行っても道は真っ直ぐで。
対向車も、追い抜く車もなくて。
ただただ、段々とサイレンの音だけが近づいてくる。
やがてサイレンは背中からするようになって、恐る恐る振り向くとそこには――
「そこの学生、止まりなさい!こんな夜更けに何やってるの!!」
白と黒のラインで配色されたパトカーがきていた。
途端に、緊張が緩んで倒れこむ。
「ちょっと、君大丈夫!?」
もう体も精神の限界で立てずにいると、パトカーから一人の警官が降りてきた。
こっちに来るとき、何度か車に戻っている様子からすると、もうひとりぐらいいるようだ。
ともあれ、警察さえいればなんとかなる。
すがりつくように警官に話を始める。
ここはどこなのかということ。
どうしてこんなことになったのかということ。
そして、どうにか元の場所に返して欲しいということ。
きっと上手く話せていなかったんだと思う。
けど、やけにこなれた感じで警官は答えたのだった。
「あー、君もアッチの人か」
「あっちの…ヒト…?」
「あー、こっちの話。にしても最近は多くてねー、君なにしたの?」
めんどくさそうな警察の態度に軽くキレそうになる。
こっちはそれどころじゃない。
でも、逆にその態度が少し冷静さを取り戻させてくれて、なんとか経緯を説明する。
斎藤のこと、田中のこと、二人がいなくなったこと――全て包み隠さず話した。
それを聞いた上で警察の人はパンと手を叩くといった。
「何はともあれ、君は無事で良かった。
今はちょっと混みいってるんだけど――まあ、歩くのも大変でしょ?パトカーで送るよ。」
正直、このまま放置されるよりはずっとマシだ。
俺は二つ返事で答え、パトカーに向かう。
斎藤と田中のことは気になったが、
聞くと「いいから」とのことで、きっとなんとかしてくれるに違いないと思った。
そして、送ってもらっていると、不意に強い眠気が襲ってきた。
ウトウトしていると、車を運転しながら警官がぼそりと呟いた。
「運がいいやつ――」
気づくと、俺は自室の布団の中にいた。
どうやら、寝ている間に家まで送ってくれたらしい。
でも、翌日家族に聞くと「そんなことはなかった」という。
首をかしげつつ、翌日も学校に登校すると――トイレから姿見鏡はなくなっていた。
いや、それよりも重要なことがある。
クラスメイトに聞いても、先生に聞いても、そして親に確認しても――
斎藤と田中なんてやつは、いないというのだ。
でも、しっかり俺には記憶がある。
三人で文化祭の居残りをした記憶が。
そして何より、トイレに行くたびに気になることがある。
小さなネジの跡が残っているのだ。


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