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子供のころ両親が共働きで、
うちには幼い俺を世話してくれてた
佐々間のおばちゃんと言う人が居た。
おばちゃんはちょっと頭が良くなかったせいか、
仕事は持たず、自分ちの畑とうちのお手伝いで食ってるようだった。
おばちゃんの仕事は、学校から帰ってきた俺にご飯を作ることと、
家の掃除洗濯、あと、体が弱く入退院を繰り返してた婆ちゃんの介護だった。
ある日、俺が学校から帰ってくると、珍しくおばちゃんは居なかった。
変わりにいつも寝たきりの婆ちゃんが起きていて、
居間でお茶を飲んでいた。
おばちゃんが家に居るのが普通だったので、
お婆ちゃんに「今日はおばちゃんは?」と聞くと、
「今日はまだ来ていないよ」と言って、俺を二階に閉じ込めるように押し込んだ。
「今日は誰が来ても降りてきちゃいけないよ」
と言って、お菓子とぽんジュースを渡された。
「誰が来てもって、誰が来ても?」と聞くと、
お婆ちゃんは少し困ったような顔で「そうだよ」と言い、
「シーっね」と口に指を当てながら襖を閉めた。
うちには幼い俺を世話してくれてた
佐々間のおばちゃんと言う人が居た。
おばちゃんはちょっと頭が良くなかったせいか、
仕事は持たず、自分ちの畑とうちのお手伝いで食ってるようだった。
おばちゃんの仕事は、学校から帰ってきた俺にご飯を作ることと、
家の掃除洗濯、あと、体が弱く入退院を繰り返してた婆ちゃんの介護だった。
ある日、俺が学校から帰ってくると、珍しくおばちゃんは居なかった。
変わりにいつも寝たきりの婆ちゃんが起きていて、
居間でお茶を飲んでいた。
おばちゃんが家に居るのが普通だったので、
お婆ちゃんに「今日はおばちゃんは?」と聞くと、
「今日はまだ来ていないよ」と言って、俺を二階に閉じ込めるように押し込んだ。
「今日は誰が来ても降りてきちゃいけないよ」
と言って、お菓子とぽんジュースを渡された。
「誰が来てもって、誰が来ても?」と聞くと、
お婆ちゃんは少し困ったような顔で「そうだよ」と言い、
「シーっね」と口に指を当てながら襖を閉めた。
俺は大人しく炬燵に入りテレビを見てると、
6時近くになって薄暗くなってからおばちゃんの声が聞こえた。
二階と言っても狭い家。
玄関に誰が来たかくらいは聞き耳立てなくても分かる。
「洋介君はまだ帰ってきておらんかねえ」
とおばちゃんが言うので、出て行こうかとも思ったが、
婆ちゃんの誰が来ても降りてくるなと言う言葉を思い出し、
そのまま炬燵でごろ寝を続けた。
おばちゃんと婆ちゃんのやり取りに暫く聞き耳を立てながら、TVを見続けた。
また暫くして佐々間のおばちゃんがやってきた。
「洋介君はまだ帰ってきとらんかねえ。三浜屋(俺がよく言ってた駄菓子屋)にもおらんようやが」
すると婆ちゃんが、
「今日はまだやがねえ。友達のところに遊びに行く言うてたから、遅くなるんやないかねえ」と嘘をついた。
幼心に、俺は匿われてるのだとぼんやり悟り、
息を殺して炬燵に潜り込んだのを覚えてる。
日も落ちすっかり暗くなって、おばちゃんはまたやって来た。
「洋介君帰ってきたね?」
婆ちゃんは少しきつい口調で、
「まだよ。まだ帰らんよ。今日はもうご飯いいからお帰りなさい」と追い返した。
暫くして、8時くらいになって父母が帰ってきた。
婆ちゃんがのそのそと階段を上がってきて、
俺に「もう降りていいよ」と言ってきたので、
俺はいつもより大分遅めの夕飯を食べた。
その晩、近所の竹やぶで、
佐々間のおばちゃんが首を吊っているのが見つかった。
遺書には、
『希望がないのでもう逝きます。一人で逝くのは寂しい』
みたいなことが書いてあったらしい。
身寄りのないおばちゃんは、何を考えて俺を探してたのか。
推測すると、ほんのり怖くてちょっと悲しい。
6時近くになって薄暗くなってからおばちゃんの声が聞こえた。
二階と言っても狭い家。
玄関に誰が来たかくらいは聞き耳立てなくても分かる。
「洋介君はまだ帰ってきておらんかねえ」
とおばちゃんが言うので、出て行こうかとも思ったが、
婆ちゃんの誰が来ても降りてくるなと言う言葉を思い出し、
そのまま炬燵でごろ寝を続けた。
おばちゃんと婆ちゃんのやり取りに暫く聞き耳を立てながら、TVを見続けた。
また暫くして佐々間のおばちゃんがやってきた。
「洋介君はまだ帰ってきとらんかねえ。三浜屋(俺がよく言ってた駄菓子屋)にもおらんようやが」
すると婆ちゃんが、
「今日はまだやがねえ。友達のところに遊びに行く言うてたから、遅くなるんやないかねえ」と嘘をついた。
幼心に、俺は匿われてるのだとぼんやり悟り、
息を殺して炬燵に潜り込んだのを覚えてる。
日も落ちすっかり暗くなって、おばちゃんはまたやって来た。
「洋介君帰ってきたね?」
婆ちゃんは少しきつい口調で、
「まだよ。まだ帰らんよ。今日はもうご飯いいからお帰りなさい」と追い返した。
暫くして、8時くらいになって父母が帰ってきた。
婆ちゃんがのそのそと階段を上がってきて、
俺に「もう降りていいよ」と言ってきたので、
俺はいつもより大分遅めの夕飯を食べた。
その晩、近所の竹やぶで、
佐々間のおばちゃんが首を吊っているのが見つかった。
遺書には、
『希望がないのでもう逝きます。一人で逝くのは寂しい』
みたいなことが書いてあったらしい。
身寄りのないおばちゃんは、何を考えて俺を探してたのか。
推測すると、ほんのり怖くてちょっと悲しい。
コメント
コメント一覧 (17)
その人は頭が良すぎて統合失調症を患い、同じように吊ってしまった。
おばさん、あなたの話してくれたポンペイの遺跡の話、とても好きでした。
私がもっと大人だったら興味深い話が聞けたのになぁ。
辛い話だね。
ある日突然自サツするというよりどんどんおかしくなっていったんじゃね?
実の祖母に何回も気軽に聞くってことは祖母とはそれなりに仲が良くその変な空気も感じ取っていたのでは
只、やることが自サツとは断定してなかったんだろうな
不穏な空気を感じたから匿ったんだと思う
たぶん、お婆さんと、オバちゃんの折り合いが悪くなったのだろう…
そこでオバちゃんは、お婆さんの可愛い孫を命を奪って、お婆さんを自分と同じ悲しい身にさせようとしたのではないか?
いざこざが起こると、矛先は子供を奪うことになるわね
おばちゃん結婚しないで山で1人で暮らしてて
子供の頃いっぱい遊んでくれたから私はなついてたんだけど
親戚でゴタゴタあったせいで疎遠になってしまった
こんな風におもいつめてないといいな…
話読んで、疎遠になってるけど連絡してみようと思いました。
自分語りになってしまうけど、職場にいる普段は無口な老齢の上司と2人きりで仕事していた際に昼休みになって突然その爺さんが「今日はもういいから帰りなさい」と言い出したんだ。自分が「まだ仕事が」と食い下がるも最初は穏やかだった口調が終盤にはキレ気味で「いいから今日はどこにも寄らずに帰りなさい」と言うんでその日は大人しく帰ったんだけども、その直後に未曾有の大地震が。
3月11日の午後だった。
今はいなくなってしまったので話は聞けないままだったが何を感じて帰してくれたのだろう。
子供が帰ってくる前に一度たずねて来てて、その時にばあちゃんはおばさんが生きてないって知って、子供帰宅後に匿って、余計な事は誰にも言わなかったって事じゃないかな
成仏されていれば良いのだけど。
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