人を呪わば穴2つ、という言葉がありますよね。

呪いを返されれば、自分もそれなりの覚悟をしなくてはいけません。
例え、自覚がなくても。

これは私の母の話。

母の実家は福岡にあります。
その昔は福岡県を流れる某川沿いで、
運搬業の方を対象とした宿を経営していました。
母が生まれた頃には既に宿の経営はしておらず、
お客さんを泊める棟に祖父母(私から見た曾祖父母)、
母屋の半分を母一家で使用していました。
そして、母屋のもう半分は安価で貸していました。

母が中学生の頃、ある母子家庭がそこを借りたそうです。
子供は母と同じか1つ上くらいで、大人しい男の子だったそうです。
元々母と叔父(母の兄)は人見知りだったこともあり、
あまり親しくはしていなかったらしいです。

隣人が住み始めてから少し経ったある日、
学校から帰ってきた叔父が洗面器から溢れる程の鼻血を出して倒れました。
救急車で病院に運ばれて検査を受けた結果、
胃に癌と思われる影があるということでした。
ただ、色々と不審な点も多いので、叔父はそのまま検査を兼ねて入院。

また、その数週間後、学校でテストを受けていた母が気分を悪くして早退しました。
その晩のうちに激しい嘔吐を繰り返し、高熱を出して倒れ、病院に運ばれました。
検査の結果は不明でしたが、
しばらくは自宅で安静にするようにと言われたらしいです。



私の祖母は、「これは何かある」と思ったらしく、
以前から頼っていた祈祷師さん(石鎚さんみたいな)のところへ母を連れて行きました。

祈祷師さんは母を見るなり、「大変なことになりましたね」と言ったそうです。
話によると、これは呪いだということでした。
ある人が祖母を妬んで呪っているのだと。

呪いというものはその対象の一番大切にしている人に向かい易いらしく、
祖母の子供へと向かったのだそうです。
その祈祷師さんは言いました。

「呪いを返しますか」と。

祖母は、もちろん返して欲しいと言ったそうです。
祈祷師さんは、

「昔から人を呪わば穴2つと言います。人を強く妬んだり、恨んだり、
不幸になればいいと念じれば、本人が呪った意識がなくても呪いになるのです。」

「呪いを返せば、やはりその人の一番大切なものに降りかかります。それも、より強く。」

と言うと、祭壇の蝋燭に火をつけました。
母はその言葉を未だにしっかりと覚えているそうです。
祈祷師さんがお経を唱え始めてすぐに、母の体を包んでいた倦怠感や吐き気が消えたらしく、
帰る頃にはいつもより元気な様子だったそうです。

その翌日、叔父のレントゲンからは癌だと思われていた影が消え、退院。
兄妹揃ってすぐに学校へ行けるようになったそうです。

ところで、皆さんはもう気付いていらっしゃると思います。
祖母に呪いをかけた人物のことを。

それから数週間後、隣人の母息子は福岡市内へと引っ越していきました。
息子さんの胃に大きな癌ができた為、入院したそうです。
隣人と祖母はあまり関わりがなかったそうですが、
何か些細なことで隣人に妬まれてしまったのだと思います。