怪談ロゴおうまが

連日の雨でムシムシジメジメして気の滅入るこの梅雨の時期ですが、ゾッとする長文の怪談話を読んで気分だけでも涼を感じてみてはいかがでしょうか(おうまがタイムズ)



20
これは! 

母と娘が旅行に出掛けた。 
娘はもうすぐ嫁ぐ身であり、最後の親子水入らずだった。 
ありきたりの温泉宿で、特徴は海に面している、というくらい。 

部屋に通されると手持ち無沙汰になった。 
駅から続く温泉街の土産物屋はだいたい覗いて来たし、夕食までにはまだ時間があった。 
そこで二人はお風呂に行く事にした。 
「この先の廊下を行くとあります。今でしたら丁度、夕日が綺麗ですよ」 
女中さんはそう言って、忙しそうに戻って行った。 

言われた通りに進むと、一本の長い廊下に出た。 
左右にはバーや土産物屋が並んでいる。 
そこを通り過ぎて行くと、廊下は右に曲がっていた。 
その正面には『男湯』『女湯』の暖簾が。 
中から音は聞こえない。 
ふたりで満喫できそうだ。 

支度を済ませ浴場に入ってみると、案の定誰もいない。 
「うわー、素敵ねぇ」 
娘は感嘆の声を挙げた。 

正面は全面開口の窓、窓に沿って長方形の湯船。 
その窓の外には夕日に光る一面の海。 
二人は早速、湯船につかった。




22
ふと娘は、湯船の右奥が小さく仕切られているのに気付いた。
1メートル四方程の小さなもの。
手を入れてみると、飛び上がるほどの熱い湯だった。
「きっと足し湯用なのね」
母の言葉に娘は納得した。

湯加減、見晴らし、なにより二人きりの解放感。
二人は大満足で風呂を堪能した。

窓と浴槽の境目には、ちょうど肘を掛けられるくらいの幅がある。
母は右に、娘は左に、二人並んでたわいもない話をしていた。
ゆっくりと優しい時間が過ぎて行く。

その時、母は突然悪寒を感じた。
自分の右の方から、冷たいモノが流れて来るのを感じたのだ。
普通ではない。なぜかそう直感した。

あの熱い湯船の方から、冷たい水が流れてくるなんてありえない。
それに視線の端に、何かがチラついている気がしてならないのだ。
急に恐怖感が涌いて来た。

それとなく娘の方を見てみる。
瞬間、母は血の気が引く思いがした。
娘の表情。これまでに見た事のない表情。
しかも視線は自分の右隣を見ている。
口はなにかを言おうとパクパク動いてるが、声にならない。

母は意を決して振り返って見た。
確かに誰もいなかったはずだ。
また、後から誰かが入って来たはずもないのだ。

が、自分の右隣には見知らぬ女がいた。
しかも、自分達と同じ姿勢で、肘をついて外を見ている。
長い髪が邪魔して、表情まではわからない。
しかし、なにか鼻歌のようなものを呟きながら外を見ている。


23
「おか、あさん、その人…」
娘はようやく声を絞り出した。
「ダメ!」
母は自分にも言い聞かすように声をあげた。

母の声に娘はハッとして、口を押さえた。
そう、別の客かも知れない。
そうだとしたら失礼な事だ。
しかし、誰かが入って来たなら気付くはず。
ましてや、自分達のすぐ近くに来たなら尚更だ。

やはりおかしい。
そう思って娘がもう一度母の方を見ると、さっきの女はいなくなっていた。
しかし母に視線を合わすと、母は洗い場の方を指差していた。

そこには、出入口に一番近い所で、勢いよく水をかぶるあの女がいた。
何杯も、何杯も、何杯も、水をかぶっている。
娘は鳥肌が立った。
正に鬼気迫る光景だった。
母の顔色も真っ青になっている。

「もう出ようよ」小さな声で母に呟いた。
「けど、もしあれなら、失礼になるんじゃ」
母も気が動転しているようだった。
「それに」母が続ける。
「私、あの人の後ろ恐くて通れない」
そう言う母は恐怖からなのか、少し笑みを浮かべていた。


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母のその一言で、娘は気を失いそうになった。
自分も同じだ。
恐くて通れない。
「じゃ、どうするの?助け呼ぶ?」
「だから、普通のお客さんだったら…」

そう答える母にもわかっていた。
あの女は異常だ。
第一あれだけ勢い良く水をかぶってるのに、水の音が聞こえてこない。
「こわいよ、どーするの、ねぇお母さん」
娘は半泣きになっていた。
「とりあえず、ここで知らんぷりしときましょ」
母はそう言い、また外を見た。

不思議だ。
さっきは水の音なんて何一つ聞こえなかったのに、背後からはザバーッザバーッと聞こえてくる。
二人はただただ、身を強ばらせるばかりだった。

その時。突然水をかぶる音が止んだ。
止んだ瞬間に、娘は震えながら母を見た。
娘は泣いていた。


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しかしお互いに顔を見合わせるばかりで、振り返る勇気がない。
そのまましばらく時間が過ぎた。

「出て行ったみたい」
母は娘の方に視線をうつした。
娘は静かに下を向いていた。
ただたまに、しゃくりあげるのが聞こえる。
「ほら、もう大丈夫だから、ね、もう出よう」
母の優しい声に諭され、娘はゆっくり顔を上げた。
よかった、心の底からそう思い母の方を見た。

母の後ろ。
熱い湯の入った小さな湯船。
そこにいた。
髪の長いあの女。
熱くて入れるはずのない湯船の中に。

湯船一杯に自分の髪を浮かべて。
顔を鼻から上だけ出して。
娘を見て、ただじーっと見つめて。
そしてニヤリと笑った。

「ギャー!」

娘は絶叫して母にすがりついた。

母は娘が何を見てしまったのか知りたくなかった。
寄り添う娘の肌は冷えきってしまっている。
「出よう、おかしいもの。歩けるでしょ」
そう言いながら娘を立たせた。
早く、早く。
もどかしくなる。
水の中がこんなに歩き辛いなんて。

それでもなんとか湯船をまたいで洗い場に出た。
娘は顔を覆ったままだから足元もおぼつかない。
出てしまえばもう大丈夫、突然、安堵の気持ちが涌いて来た。
そして、母は最後に湯船を返り見てしまった。


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そこにはあの女が立っていた。
長い髪から水をポタポタ垂らしていた。
下を向いたまま立っていた。
窓スレスレのところに立っていた。

ここで母はまた背筋を寒くする。
立てるはずなんてない。
窓と湯船の境には、肘をつくのがやっとのスペースしか無いのだから。

浮いている?
そう言えば女の体は微かに揺れている気がする。
湯煙でよくわからない。
恐怖が限界に達し、母も叫び声を挙げてしまった。

二人は駆け出した。
体なんか拭いてられない。
急いで浴衣を身に付けると、自分の持ち物もそのままに廊下に飛び出し、一番手前にあった寿司バーに駆け込んだ。

「なんかいる!なんかいるよ、お風呂に!」
娘は大声で板前に叫んだ。
最初は怪訝そうな顔で二人の話を聞いていた板前の男も、次第に顔が青冷めていった。

「その話、本当なんですよね」
「こんな嘘付いたとこでどうにもなんないでしょ!」
娘はバカにされた様な気がして、思わず怒鳴りつけてしまった。
そして母も続けた。
「私も確かに見てしまいました。本当です」
母のその一言を聞いた板前は、どこかに電話を掛けた。


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しばらくすると、ここの女将らしき女性がやって来た。
少し落ち着きを取り戻した母子は、以前に何か不穏な出来事があったのだろうと直感した。

女将は軽く挨拶をすると、ゆっくり話しはじめた。

5年程前、一人の女がこの旅館にやって来た。
髪の長い女だった。
なんでも、ここで働きたいという。
女将は深刻な人手不足からか、すぐに承諾した。

しかし、女には一つだけ難点があった。
左目から頬にかけて、ひどい痣があったのだ。
「失礼だが接客はして貰えない。それでも良い?」
女将は聞く。
「構いません」
女はそう答えて、この旅館の従業員となった。

女はよく働いた。
それに、顔の印象からは想像出来ない明るい性格であった。

ある時、女将は女に痣の事を聞いてみた。
嫌がるかと思ったが、女はハキハキと教えてくれた。
ここに来る前に交際していた男が大酒飲みだった事。
その男が悪い仲間と付き合っていた事。
ひどい暴力を振るわれていた事。

「その時に付けられた痣なんです」
女は明るく答えてくれた。
「そんな生活が嫌になって、逃げて来たんです」
そう言う女の顔は、痣さえなければかなりの美人だったらしい。

それからしばらくして、この旅館に三人のお供を引き連れた男がやって来た。
そして、ある従業員に写真を突き付けた。
「こいつを探している」
あの女だった。


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もちろん「知らない」と答えて追い返した。
しかし、ここは小さな温泉街。きっとわかってしまうに違いない。
そう考えた女将は、方々に手を尽くして女を守った。

しかし女は恐怖で精神が参ってしまった。
あんなに明るかったのに、ほとんど口を聞こうとしない。
女将は心配したが、女は大丈夫と言うばかり。

ある日、定時になっても女が出勤して来ない。
電話にも出ないし、部屋にもいない。
結局どうにもならないので、無断欠勤という事にしてしまった。

ところが。
「大変。女将さん大変よ!」
何事か。従業員に連れられて向かったのは、風呂場だった。

そこに彼女はいた。
窓の外、向かって右に立つ大きな松の枝に首を吊っていた。
急いで降ろしてやったが、すでに氏んでいた。
悲しい事に、おそらく女は氏ぬ前に髪を洗っていたようだ。
自慢の髪だったのだろう。
まだシャンプーの匂いが漂っていた。

不吉だという事でその松は切り倒された。
髪の巻き付いた長いロープと一緒に、寺で燃やして貰ったのだという。

「彼女がぶら下がっていた場所というのが、お客さまがその『何か』をご覧になった場所だったんです」


よくある話だが個人的にはコワカタ


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闇が深いな
男が頃しにきたとも取れる


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>>34
自サツに見せかけてころしたのかもしれない・・・・


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てか 何系の怪談がいいとかリクエストはあるかい?


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人怖希望


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まずはこれをどうぞ人怖はストック少ないが

仕事が終わり、男はいつもの帰り道を歩いていたときのこと。

ふと視線を感じ、ある家の2階を見ると、初老のおじさんが窓際に立ってこちらに手を振っていた。
それも満面の笑みで。

なにか気味が悪かったので、男は無視して家に帰ったという。

あくる日、仕事が終わり、またいつもの道を通る。
そしてまた例の家の2階を見るとおじさんが満面の笑みで手を振っている。

気味が悪かったのでまた無視することにした。

これは男が近所のおばさんから聞いた話だが、あの家に住んでいるおじさんは精神病んだのだか、痴呆だかでちょっとおかしくなってしまい、いつも2階の窓から道行く人に手を振りまくっているということだった。
家族が相手をしてくれないから、そうやって寂しさを紛らわせているらしい。


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人怖俺も好きだわ


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それからというもの、その家の前を通る度おじさんは手を振っている。
いつも満面の笑みを浮かべ・・・

またそこを通ったらあのおじさんがいつもと同じ事している。
いつも無視していては何だか可哀想な気がしたので、その日男はたまには手を振り返してやることにした。

「しょうがねえなあ~」

と手を二階のおじさんに向けて振ってやった。

するとおじさん、たいそう喜んで激しく手を振り返してきた。

「おじさん喜んでる・・・」

おじさんがあまりに嬉しそうだったので、それからというものそこを通ると手を振ってやる事にした。

そんなある日男は仕事帰りにまたおじさんの家の前を通りかかり、同じように手を振ってあげた。

片手を挙げ、バイバイと手を振る。
するとおじさん両手を挙げ満面の笑みで手を大きく振ってきた。

「おじさんかなり嬉しそうだ!」
そう思うとこっちも嬉しくなり、男も激しく手を振ってあげた。

そして「おーい!」と両手を大きく頭の上で振った。
そしたらおじさんは窓を開け、満面の笑みでこう叫んだ

「今行くぞー!!」


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え?と男は思った。

おじさんそう言うと、満面の笑みで2階から男のいる方にダイブしたのだ。

どさっという物が落下する音と共に嫌な音が耳に残る。

「ゴッキ!!」

鈍い音がした。
塀でおじさんの姿は見えないが、落ちる瞬間の体勢からして頭から落ちたのは確かだった。

その音を聞き、家族らしき人が出てくる。

「ヤバイことになった・・・・」
男は怖くなりその場から逃げ出した。

おじさんがどうなったかは男には解らないが、普通の落ち方ではないと思った。
もしかして氏んだかも・・・

男は家に帰るとベットの中で震えていた。
自分に罪はないと何度も自分自身に言い聞かせたが、やはりだめで、その夜は恐怖と罪悪感で眠ることができなかった。

次の日分ったことだが、おじさんは首の骨を折って亡くなってたらしい。
即氏だったのかどうかは不明だが、男は手を振り返した事を大変後悔した。
なによりおじさんを助けようとせずに逃げた自分を恥じ、それに罪悪感を感じた。


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それから男はおじさんがいた家の前を通る事はなくなった。
というか怖くて通れなくなった。

早く忘れたい・・・それだけである。

しかし後悔の念は取れないし後気味が大変に悪いので、けじめをつける意味でおじさんに謝ろうと決心した。
心から謝り、自分の心を整理してその事件から決別しようとしたのだ。
そして仕事帰りに勇気を出し、その家の前を通った。

嫌な気分になりながらも家の前につき、手を合わせおじさんに心の中で謝った。

「逃げたりして本当にごめんなさい・・・・」

涙がにじんだ目でおじさんのいた2階の部屋を見上げると、誰かが手を振っている。
誰かいるのかな?

・・・・・・そのとき背筋が凍った。
おじさんが満面の笑みでこちらに手を振っていたのである。

信じられない光景に男は呆然としてしばしそれを眺めていた。
氏んだはずなのに・・・・・

しばらく呆然と見ているとおじさんが窓を開けだした。
そしてこう叫んだ!

「今行くぞー!!!!!!」

やばい!!
男は只ならぬ危機感を感じ全速力で逃げ出した。

「うああ、こっちにくる!!」

全速力で住んでいるアパートまで走った。
走って走って走った・・・

そしてアパートに着くと息を切らしてベットに潜り込み震えていた。
なんでおじさんが!?・・・・

そのとき声がした。
「おーい、おーい、おーい・・・」

おじさんの声がする、どうやら男を捜しているようだ。

「おーい、おーい、おーい、おーい、おーい・・・この近くにいるんだろ?・・・」

自分の部屋の前を行ったり来たりしているようだ。

「早くどっか言ってくれ・・・・」
男はそれだけを願いながらベットの中で震えていた。


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「おーい、おーい、おーい、おーい、おーい、おーい、おーい、おーい・・・」

狂ったようにおじさんは叫び続けている。

「おーい、おーい、おーい、おーい。俺の話を聞いてくれよ・・・寂しいんだよ・・・」

そんなこと言われても氏人と話す事なんて・・・。
男は震えながら、とにかく早くどっか行ってくれることを願った。
耳を押さえ、ただベッドで震えていた・・・

そして気が付くと朝であった・・・

それからというもの、夜中になるとおじさんがアパートの近くで男を探すようになった。

「おーい、おーい・・・」

自分の寂しさを訴えながら男を捜すのである。
このままでは精神的にもやばくなりそうだし、あの世に連れていかれると思ったので男はすぐそこを引越したという。


あれから五年が経つがおじさんはまだアパートの前で自分を探しているのだろうか?
自分が住んでいた部屋に引越してきた新しい住人のことを自分と間違えて、尋ねて来ていなければ良いが・・・

男は心配していた。

そのアパートは、南向きの2階建てで、ある私鉄の駅から自転車で10分程度。
階段から一番遠い部屋が、その部屋だ。

思い当たる人は、どうか気をつけて・・・


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あり よく考えたらこれ人怖じゃねぇな
ちょい時間おくれ・・・・


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おもしろかったから問題なし


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これは人怖かな?短くてすまん

男は一週間振りに出張から家に帰ってきた。
出張前の掃除は必ず怠らないので、さっぱりとして気持ちいい帰宅。

男はシャワーを浴び、つまみを食べながらビールを飲む。
眠くなった男は寝室へ行き、部屋の明かりをつけようとスイッチに手をかけた。

「カチッカチッ」

あれ?
電球きれたのか?
部屋の明かりはつかなかった。

久しぶりの寝室に漂う緊張感に身をふるわせ、ベッドに滑り込んだ。
午前2時、ケータイの着信音が突然鳴り出した。

「あなたの家にいったら知らない女の人がいて…」
「ゆみこ?何言ってるの?」
男は彼女の言葉に心臓はバクバクなった。

…心当たりはある。
浮気を認めて謝るか、言い訳を考えるか。
いや待てまだ決断の時じゃない。
母親かもしれないし、もしかしたら管理人さんかも。

なんで管理人さん!?
あのおばちゃんが僕の不在を狙って部屋に入り何をしたんだ?
それはそれで怖いよ!

とりあえずシラを切り、適当に彼女の話しに合わせながら状況を判断しよう……
「で、何?……」


「ころした。ベッドの下置いといたから。」


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これは人怖なのかわからんがラストっちゅうことで

長年連れ添ってきた彼女と結婚を決めた、ある男がいた。
彼女は嫉妬心が強く、彼が別の女性と話をするだけで嫌な顔をする。
そんな彼女を鬱陶しく思うこともあったが、彼女は一途に自分を愛してくれるので、男は結婚を決めたのだった。

結婚式を終えて念願のマイホームも購入し、二人の新婚生活が始まった。
妻となった彼女は毎朝男を玄関から見送り、 夜は手の込んだ手料理を用意して待っていてくれた。
男にとって、とても幸せな新婚生活だった。

数年後、妻が初めて妊娠した。医者によると女の子だそうだ。
男は妻の妊娠を心から喜び、妻も自分のお腹をなでながら幸せを感じていた。

やがてお腹もぽっこり出てきて、男はそのお腹に耳を当てて、
毎朝毎晩、これから生まれてくる我が娘に話しかけた。

ある日、男の携帯に病院から連絡が入る。
妻が流産したのだ。
男は急いで妻が担ぎこまれた病院に向かった。
産婦人科の担当医が流産の事実を男に話した。

男は病室で寝ている妻のところへ向かった。
妻は悲しそうな目で窓の外を眺めていた。
男は「残念だったな…」と呟いた。
「…仕方ないね」と妻も呟いた。

その後、妻が振り絞るような声でこう続けた。

「また子供つくろう。氏んじゃったあの子の分も生きられるような、元気な男の子をね…」


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赤いクレヨンみたいでゾワッと・・・・

二人の少年が病院の廃墟を探検しに出かけた。
その病院は、繁華街から少し離れた場所にある。
特に何かが出たという話は今まで聞いたことはなかったが、好奇心と怖い物見たさから少年たちは廃墟へ向かった。

廃墟の中には多くの病室があった。
病室にはベッドがあり、まるで誰かがさっきまで寝ていたように、かけ布団がめくれた状態でホコリをかぶっていた。
期待していたような怪奇現象に遭遇することはなかったが、お化け屋敷のような廃墟に、少年たちはワーワー言いながら騒いだ。

しかし、8階のある病室の前に来たとき、二人のはしゃぎ声が止まった。
この部屋はどうも様子が違う。他の部屋は扉が壊れていたり開けたままになっているのだが、その病室だけはしっかりと扉が閉まっているのだ。
さらにおかしなことは、南京錠がかけられていることだった。

何のためにこの病室だけ鍵をかけたのだろうか。
部屋の中には何があるのだろうか…。

少年たちは、その病室のドアを開けてみることに決めた。
『廃墟の封印された部屋』なんて、これほど好奇心をそそられるものはない。

二人は診察室からパイプ椅子を持ってきて、思いきり鍵を叩いた。
鍵は錆びていたようで、思ったより簡単に壊れた。

「氏体があったらヤバいな…」
「それはないよ(笑)。あっても劇薬なんかだろ」

二人は緊張しながらドアを開けた。


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部屋の中には氏体も劇薬もなく、
ただ、部屋の壁に変な模様があるのが気になった。

遮光性のカーテンのせいか、部屋は薄暗い。
部屋の中央を見ると、シーツのような布が落ちていた。

一人の少年がカーテンを開け、鍵がかかっていなかったので窓も開けた。
部屋の中に光がさし込み、明るく照らされる。

次の瞬間、二人は絶句してしまった。

部屋の壁一面にびっしり、『たすけて』と書かれていたのだ。

それが変な模様の正体だった。

大小様々な『たすけて』の文字をよく見ると、所々に小さな文字で『しにたくない』と書かれている。

二人は部屋の中央に落ちていた布を恐る恐る指でつまんでみた。
その布には、錆びた鉄の色をした染みがついていた。
布の先を持って広げてみる。
ベリッ、バリッと音を立てながら、くっついていた布が広がった。

この色、この臭い…。この染みが何であるか予想できたが、決して口には出せなかった。
とにかく早くこの部屋を出たい!
少年たちが振り返ると、ドアが目に入った。
ドアに酷く乱れた字で書かれていた言葉。
二人は恐怖で気が狂いそうになった。

『もうだめだここからでられないでられないでられないでられないでられない……』

二人は一目散に病院から逃げ出した。
一体だれが書いたのか。この部屋で何が行われていたのか…。
謎は解けないままである。


52
読んでる人おる?


54
読んでるよ!


55
おっしゃーもうちょい続けるか


56
>>1チョイスが最高だな


57
夢オチの話ではあるがぞわっときたので

もやが掛かった河原を歩いていると、人が二人争ってるのを見つけた。

慌てて駆け寄ると、女が二人…いや、髪が長いが一人は男だった。
着流し?に落ち武者みたいな長い髪だ。
そいつが馬乗りになって女性の首を絞めている。
相手は……

「母さん!?」

私の母親だった。
苦しそうにうめいている。
私が「何やってやがんだ!」と叫ぶと男はこっちを振り向いた。

片方の目が潰れ、耳と鼻が削ぎとられ、歯も何本か無い。
開いている方の眼で私をギロりと睨んだ。
そしてこう言った。

『カツサダに、カツサダに眼ェとられた、あと1つ、あと1つコイツからもらう』

再び母の方に向き、今度は握りコブシで母の顔面をガンガン殴り始めた。
何とかして母を助けようと思った私は、ハッキリとは覚えてないが、咄嗟にこう叫んだ。

「眼が欲しいんならウチの眼ェくれてやる!母さん返せ!」と。

男は殴るのを止め、眼玉の無い顔をこっちに向け、ニヤ~っと笑った。
そして母から手を離し、私に向かって飛び掛って来た。


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視界は真っ暗になり、目が覚めたときには汗びっしょりだった。
それだけじゃない、私は起きる瞬間まで、自分の左まぶたを自分の左手でガリガリガリガリ引っ掻き続けていたのだ。
その痛みで目が覚めたんだ。

その日、眼球がパンパンに腫れ、眼科に行くハメになった。
医師曰く
「失明の心配は無いが、レンズに傷が付いてるので視力低下は免れない」との事だった。
おかげで今も視力は1.5と0.3である。


後日、お彼岸か何かで母方の実家に集まる事があり、母がこんな話をした。

「夢の中で知らない男に首を絞められて、氏にそうになったんだけど、この子(私)の『お母さん、お母さん!』って声が聞こえてフッと楽になったんよ」

私は驚き自分が見た夢の話をした。

母はボロボロ涙を流しながら、祖母は嗚咽でしきりに謝り始めた。
「ゴメンなぁ、ゴメンなぁ」


59
そして祖母はこんな話を始めた。

母方の7、8代前の先祖に『カツサダ』という男が居て、藩の牢番の職につき、特に拷問の役を任されていた。
残忍な性格の男で、拷問の途中しばしば『事故』と称しては罪人をいたぶりころしていたそうだ。

焼きゴテを当て、両目を潰し、爪を剥がし、歯を抜き、耳や鼻を削ぎ落とし、罪人自身に食べさせたり。
それはそれは陰惨な行いだった。

『カツサダ』の氏後も大いに祟り、一族内で凶事が続いたため、本家では毎年一回、地鎮祭というか厄払いみたいなのをやっていたらしいのだが、その年はたまたま祖母が入院してた為に行われなかったのだ。

祖母はその事をしきりに謝り、こう続けた。

祖母が嫁に来た年、祖父が26の時。
たまたま結納時期と被り、その年もお払いをやらなかったそうだが、祖父も私と同じような夢を見たのだという。

夢の中、祖父が河原を歩いていると両目の無い男が現れ、顔を鷲づかみにし『カツサダぁ 眼ェ返せ』と祖父の右眼をえぐり取っていった。
そんな夢だ。

その時期から祖父は白内障を患い始め、半年の間に右目は失明してしまった。
生前祖父の白く濁った右眼を何度も見ているので周知であった。

「『両目の無い男』って言うたよね、ウチの夢では片方あったんやけど」

愚問だった。
祖母は当然のごとく言った。

「そりゃ片一方は爺さんの眼だぁな、目ぇ覚めるに男が『次は左眼を返してもらう』て言うたんだと」
「~~(私の名前)には悪いことをしたがぁ、両目が揃えばもうアレも出ぇへんやろう」

私は震えが止まらなかった。
視界が真っ暗になり左眼の痛みと共に目覚める瞬間、あの男は確かに私にこう囁いたのだ。

『次は耳を返してもらう』と。


61
きっとまた夢の中にあの男は出てくるんだろう。
私の子供か、それとも孫の代か、今度は両目が揃った、耳の無いアイツが。
眼 耳 鼻 歯 命
奪われたモノを全部取り返すまであの男は夢に出てくるんだろう。
『カツサダ』の子孫を恨み続けるのだろう。

子孫?
「ハハ…ザマぁ見ろ!」
私は独り毒づく。


私は 女性を好きになはらない んだ。


62
>>61
カツサダが危ない!!


63
これはどういうことなんでしょうねぇ・・・

ある人が今も住んでいる家で体験したという話。

今住んでいる場所は特に曰くも無く、昔から我が家系が住んでいる土地なので、この家に住んでいれば、恐怖体験は自分には起こらないと思っていた。

ここ最近、リビングにいると昼夜を問わず、女性の低い声で鼻歌が聴こえてくるようになった。

「ん~…ん~ん~…」

最初はよく耳をすまさなければ気付かないほど、遠くから聴こえてくるのだが、放っておくとどんどん近づいてくる。

「ん~…ん~ん~…」

それでも放っておくと、意識を集中しなくても聴こえるほどに近づいてくる。

「ん~…ん~ん~…」

その声に気づいたら、いつも般若心経の最後の部分を繰り返し唱えるようにしている。
(これしか知らないのだが……)

とにかく般若心経の「ぎゃーていぎゃーてい」のくだりを唱え続けると、声はだんだん遠ざかっていくのだった。

このせいで、リビングではテレビにも集中できない。
声が聴こえ始めるのは完全に不定期だし、早く声に気付いて般若心経を唱え始めなければ、時としてそれは部屋にまで入ってきてしまう。

「ん~…ん~ん~…」


そういえばこの前、大好きなバンドのニューアルバムが発売された。
発売日を楽しみにしていたもので、お店で買った時はもうテンション↑↑だった。

さっそく家に帰ってヘッドフォンで聴いて、一通り聴き終え、「よかったな~」と余韻に浸りながらヘッドフォンを取ると……


耳元で
「んーーーーーーーーーーー」
って。


66
ヒェッ・・・

少女がまだ4~5歳の頃の話だ。
当時家には風呂が無く、よく母親と銭湯に行っていた。
まだ小さかったので母親と一緒に女湯に入っていた頃である。

ある日のこと、身体を洗った後飽きてしまった少女は、湯船の中でプールよろしく遊んでいた。
今まで知らなかったが、湯船の横から階段になりドアが付いていることに気が付いた。
(何処そうなっていたのかは不明)

少女はふと、そのドアが気になって階段を昇りドアの前まで行ってみた。
すると、ドアノブの直下には大きな鍵穴がある。

ワクワクして鍵穴を覗いてみたのだ。

・・・・・向こう側は何かに覆われて見えない。
「なんだ、ツマらない。」
少女はいったん顔をドアから離した。

少しして、何を思ったかもう一度鍵穴を覗き込んでみることにした。

今度はぼんやりとした明かりの中、ボイラーとおぼしき器械が見える。
「わースゴい。」
少女は夢中になっていた。

その時、ドアの向こうに気配を感じたのか、それとも何かが知らせてくれたのか……
何故か少女は突然目を鍵穴から離し、身を引いた。

そして次の瞬間、鍵穴からマイナスドライバーの先端が狂ったように乱舞していた。

少女は息を呑みそこを離れたが、恐怖のあまり母親にさえそのことを話すことが出来なかった。


67
まだ子供の少女は、あの出来事も速攻で忘れて日々を過ごしていた。
間もなく引っ越すことになり、家の大掃除した後、またあの銭湯に行ったのだった。
少女は大掃除で見つけた色々なガラクタを、後生大事に持っていった。

少女は例によって風呂の中で遊んでいるうち、あのドアの鍵穴のことを思い出した。
しかしあの恐怖を忘れてしまっていた少女は、ガラクタを入れた洗面器を抱えて鍵穴を覗きに行った。

また、向こう側は何かに覆われていて何も見えない。

少女はガラクタの中にあった箸を取り出し、おもむろに鍵穴に突っ込んだ。
その瞬間、ドアの向こうでのドタバタする気配にたじろいだ少女は、箸から手を離した。

箸はブルブル震えながらそのままあったが、やがてこちら側に落ちてきた。
先から数センチが折れてる。
少女はまた母親に何も言わなかった。

その日を最後に、少女は家族と隣の市へ引っ越して行ったのだった。

数年後、小学生になった少女は、かつて住んでいたあの町に遊びに行った。
真っ先に子供の社交場でもあった、神社の境内に赴く。
そこに行けば昔の友達に会えると思ったからだ。
しかし、予想に反して、そこには誰もいなかった。

いや、境内の裏の大木の前で、一心不乱に何かをやっている大きな男が居る。

その瞬間、かつての記憶が蘇ってきた。
彼は我々から“ミッキー”と呼ばれ、怖れられていた青年だ。

透明に近いシルバーの髪、兎の様な赤い目、今考えるとアルビノであったのかもしれない。
そして彼は病的に粗暴で、メンコやベーゴマに興じる少女達の中に乱入しては、物を取り上げたり殴りつけたりを繰り返す素性が不明の人物だった。

その彼が目の前に居る。
少女は金縛りにでもあったかの様に動けなくなり、話し掛けることも逃げることも出来なかった。
彼は動作を止めると、ゆっくりとこちらを向いた。

彼の片方の目が潰れていた。


69
怖い話はやっぱりおもしろいな


71
ぽまいらも気を付けるように


これは、白神山地は熊の湯温泉宿の主人の話である。

ある日の夕方、この熊の湯温泉宿の主人のもとに「山菜採りが滑落遭難した」との一報が入ったという。
主人が現場に駆けつけると、既に地元警察や救助隊が駆けつけており、サーチライト点灯の準備をしていた。
そしてその横で、五十手前の男が泣きながら「早く女房を助けて下さい」と懇願していた。

その地点は白神ラインの天狗峠と明石大橋の中間地点で、ガードレール下は急峻な崖であった。
生き残った夫の話によると、「夫婦で山菜採りに来ていたが、ふと目を離した隙に妻が悲鳴を上げていなくなった」のだという。

季節的にも白神山地はまだ寒く、サーチライト点灯を待つ救助隊員や警察官たちは焚き火にあたって暖を取っていた。
その横で遭難者の夫が「火なんかに当たってないで早く妻を助けてくださいよ!」と恨めしそうに懇願していた。

やがてサーチライト点灯の用意が出来て、強い光が谷底に投射された。
少しずつ光の輪を横にずらしながら、遺体の捜索が始まる。
やがて、「あっ」と誰かが叫び、サーチライトの光が止まった。

(なんてこった、まず生きてはいまい)

主人は内心そう思ったという。
ガードレール下はるか200mほどの地点、岩が大きく張り出した谷の途中に女性が倒れていたのだ。
救助隊員が拡声器で呼びかけたが、何の反応もなかったという。

絶命している。
主人だけでなく、救助隊の誰もがそう直感したそうだ。


72
しかし、発見地点は下手すれば二重遭難しかねない急峻な崖である。
主人と救助隊は谷底に降りる方法を相談し始めていると、 遭難者の夫が半狂乱になりながら救助隊に詰め寄ってきた。

「早く助けて下さい! 女房が呼んでるじゃないですか!」

「もう少し待ってください、慌てるとロクなことがない」と救助隊員は必氏になって男をなだめたが、男は聞く耳を持たない。
早く助けてくれと、もう少し待ってくれの押し問答が続いた、その時だった。
男が呻くように言ったという。

「あぁ……なんであんたたちには聞こえないんだ! 女房が呼んでるのが聞こえないのか!?」

その瞬間だった。
男がバッと急に走りだしたかと思うと、あろうことかガードレールを飛び越えてしまったのだ。
その悲鳴が救助隊員を凍りつかせた。
男の身体が岩に激突しながら落下する音が不気味に響いたという。

慌てて救助隊員たちが崖下を見ると、サーチライトの輪の中に、さっきの男が倒れていた。
不思議なことに、男の遺体は妻のすぐ側に倒れていて、まるで『助けに来たぞ』と言っているように見えたという。

「なんてこった……」

主人がそう呟いた時だった。
一台の車が現場にやってきて、三十代になるかならないかという男が駆け下りてきた。

「うちの親が落ちたって聞いたんですが」


73
遭難者の息子だった。
誰もが絶句し、「今引き上げるところだから、下は見るな」と誰かが言った、次の瞬間だった。

「そんなこと言ったって、うちの親父とおふくろが谷底から呼んでるじゃないですか」

救助隊が絶句していると、息子がガードレールに駆け寄ろうとした。
咄嗟に、それを警官の一人が取り押さえた。

「止めろ止めろ止めろ! でないとコイツまで連れてかれるぞ!」
その警官がそう怒鳴った瞬間、その場にいた警官が一斉に息子に跳びかかり、息子を取り押さえた。
「何するんだ! 親父とおふくろが呼んでるのが聞こえないのか!?」
息子は半狂乱になってそう怒鳴るが、そんな声など息子以外の誰にも聞こえていなかった。 あまりにも暴れるので、結局、息子は警官に両脇を抱えられ、パトカーの後部座席に連行された。 まるで山岳救助の現場とは思えない、異様な光景であった。
しかし息子は「親父とおふくろが呼んでる」と唸り続けるわ、隙あらばパトカーの外に飛び出そうとするわで、ほとほと手を焼いた。

しかし数時間後、両親の遺体が谷底から引き上げられた途端、まるで憑き物が落ちたようにおとなしくなった。
息子は両親の遺体にすがって号泣していたが、先程までとあまりに違う息子の態度に誰もが改めてゾッとしたという。


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最後に長編を投下して俺は止めようと思う 何か変な気分になってきたもんでね。
準備おk?


75
おけ


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この話を読んだら、昔の仲間なら男が誰だか分かってしまうだろう。
ばれたら相当やばい話なのだという。
まだ生きてるって知られたら、また探しにかかるはずだ。
「でも俺が書かなきゃ、あの井戸の存在は闇に葬られたままだ。」
だから男はこの話を書こうと思ったのだという。

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文章作るの下手だし、かなり長くなってしまった。
その上怪談ではないから、興味の湧いた人だけ読んで欲しい。


今から数年前の話。
俺は東京にある、某組織の若手幹部に使われてた。
Nさんって人。
今やそういう組織も日々の微妙にヤバい仕事は、ですよ。
それも組織じゃなく、個人が雇うの。
警察が介入してきたら、トカゲの尻尾切りってやつね。
その代わり金まわりは、かなり良かったよ。
俺は都内の、比較的金持ちの日本人、外国人が遊ぶ街で働いてた。
日々のヤバい仕事っていうとすごそうだけど、実際に俺がやってたのは、ワンボックスで花屋に花取りに行って、代金を払う。
その花を俺が安いクラブから、高級クラブまで配達する。
で、花配りながら、集金して回る。
もちろん花屋に渡した代金の、3~5倍はもらうんだけどね。

俺がやるヤバい仕事ってのは、最初はその程度だった。
それでも結構真面目にやってた。
相手も海千山千のが多いからさ。
相手が若僧だと思うと、なめてかかって、値切ろうとするバカもいるんだよね。
その度に暴力沙汰起こしてたんじゃ、仕事になんないわけだ。
起こす奴もいるけど。
でも警察呼ばれたら負けだからね。
次から金取れなくなるから、組から睨まれる。
タダじゃすまんよ。


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そういう時、俺は粘り強く話す。
話すけど、肝心なトコは絶対譲らない。
一円も値切らせないし、ひとつの条件もつけさせない。


前置き長くなったけど、まあうまくやってるってんで、Nさんの舎弟のSさん、Kさんなんかに結構信頼されるようになった。

それで時々花の配達に使ってるワンボックスで、夜中に呼び出されるようになった。
積んでるのは、多分ドラム缶とか段ボール。
荷物積む時は、俺は運転席から出ない事になってたし、後ろは目張りされてて、見えないから。

それでベンツの後ろついてくだけ。
荷物を下ろしたら、少し離れたところで待たされて、またベンツについて帰って、金もらって終了。

何を運んでたなんて知らない。
その代わり1回の仕事で、花の配達の1ヶ月分のバイト代をもらえた。

ある夜、また呼び出された。
行ってみると、いつもとメンツが違う。
いつもはSさんかKさんと、部下の若い人だった。
ところがその日は、幹部のNさんがいて、他にはSさん、Kさんの3人だけ。

3人とも異様に緊張してイラついてて、明らかに普通じゃない雰囲気。
俺が着いても、エンジン切って待ってろって言ったまま、ボソボソ何か話してた。
「・・・はこのまま帰せ」
「あいつは大丈夫ですよ。それより…」
途切れ途切れに会話が聞こえてたけど、結局俺は運転していく事になった。
何だか嫌な予感がしたけどね。

後ろのハッチが開いて、何か積んでるのが分かった。
でも今回はドラム缶とか、段ボールじゃなかった。
置いた時の音がね、いつもと違ってた。
重そうなもんではあったけど。
更に変だったのが、SさんとKさんが同乗した事。
いつもは俺一人で、ベンツについてくだけなのに。
しかもいきなり首都高に入った。
あそこはカメラもあるし、出入口にはNシステムもあるから。
こういう仕事の時は、一般道でもNシステムは回避して走るのに。


78
首都高の環状線はさ、皇居を見下ろしちゃいけないとかでさ、何ヵ所か地下に入るよね。
恥ずかしながら俺は運転には自信あるけど、道覚えるのは苦手なんだよね。
方向音痴だし。

多分環状線を、2周くらいしたと思う。
車が途切れたところで、突然Nさんが乗るベンツが、トンネルの中でハザード出した。

それまでSさんもKさんもひと言もしゃべらなかったけど、Sさんが右の車線に入って止めろって。
言われるままに止めたよ。
そこって合流地点だった。
で、中洲みたいになってるとこにバックで車入れろって言うから、その通りにして、ライト消した。

両側柱になってて、普通に走ってる車からは、振り返って見たとしても、なかなか見つけられないと思う。
まあ見つけたとしても、かかわり合いにならない方が良いけどね。
Nさんが乗ったベンツは、そのまま走り去った。

SさんとKさんは、二人で荷物を下ろしてたけど、俺にも下りて来いって。
俺はこの時も、嫌な予感がした。
今まで呼ばれた事なんて無かったし。

SさんとKさんが、二人で担ぎ上げてるビニールの袋。
映画とかでよく見る、氏体袋とかいう黒いやつ。
もう中身は、絶対に人間としか思えない。


とんでもない事に巻き込まれたって思って、腰が痛くなった。
多分腰抜ける寸前だったんだろう。
何で俺なの?ってその時は思った。
その理由も後になれば分かったんだけど。

で、Sさんがポケットに鍵があるから、それ使って金網の扉の鍵開けろって言うから、言う通りにした。
金網開けて、5~6メートルでまた扉にぶつかる。
扉というより、鉄柵って感じかな。
だって開ける為の把手とか無いし、第一鍵穴すら見当たらない。

どうすんだろうな~と思ったら、またSさんが別のポケットを指定。
今度は大小ひとつずつの鍵。
コンクリの壁にステンレスの小さい蓋が付いてて、それを小さい方の鍵で開ける。
中に円筒形の鍵穴があって、それは大きい方の鍵。
それを回すと、ガチャって音がして、柵が少し動いた。

右から左に柵が開いた。
壁の中まで柵が食い込んでて、その中でロックされてる。
鍵を壊して侵入は出来ない構造らしい。


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更に先はもう真っ暗。
マグライトをつけて先に進んだけど、すぐに鉄扉に当たった。
『無断立入厳禁 防衛施設庁』って書いてあった。
これは不思議だった。
だってここ道路公団の施設だよね?

ていうか、こんなとこ入って平気なのかなって思った。
まあこの人たちのやる事だから抜かりは無いとは思うんだけど、監視カメラとかあるんじゃないのって不安になった。
まあ中に進んだら、もっと不思議なもんが待ってたんだけどね。
鉄の扉もさっきの鉄柵と同じ要領で開いて、俺たちは中に入った。


SさんもKさんもうっすら汗かき始めてて、随分重そうだったけど、運ぶの手伝えとは言わなかった。
中に入るとすぐ階段で、ひたすら下に下りて行った。
結構下りた。
時々二人が止まって、肩に担ぎ上げた「荷物」を担ぎ直してた。

階段を下りると、ものすごく広い通路が左右に伸びてた。
多分幅10mくらいあったと思う。
下りたところでひと休みした。
通路はところどころ電灯がついてて、すごく薄暗いけど一応ライトは無しで歩けた。
俺たちは反対側に渡って(って言いたくなるくらい広い)、左手に向かって進んだ。

時々休みながら、どれくらい進んだかな。
通路自体は分岐はしてない。
ひたすら真っ直ぐで、左右の壁に時々鉄の扉がついてる。
ある扉の前でSさんが止まって言った。
「これじゃねえか。これだろ」
そこには『帝国陸軍第十三号坑道』そう書いてあった。
字体は古かったけど。
信じられる?
今の日本にあるのは、陸上自衛隊でしょ。
何十年も前のトンネルなのか、これは?


80
SさんもKさんも汗だくで息も荒くなってたから、扉を入ったところで、また「荷物」を下ろして休憩する事にした。
二人とも無言だったから、俺も黙ってた。

しばらくして、Sさんがそろそろ行こうって言って、袋の片側、多分『足』がある側を持った。
そしたら…

『袋』が突然暴れた。
Sさんは不意を突かれて手を放してしまい、弾みで反対側の袋の口から、顔が出てきた。
猿ぐつわを噛まされた、ちょっと小太りの男。
どっかで見たことある…
それもあるけど、分かっていながらも、袋からリアルに人が、しかも生きた人が出てきた事にビビッて、俺は固まってた。

SさんがKさんに
「おい何で目を覚ました!」
「袋に戻せ!」
とか言ってるのが聞こえた。

Kさんは何とか答えてた。
その間も『袋』は暴れてた。
暴れてたというか、体を縛られてるらしく激しく身をよじって、袋から出ようとしていた。
するとSさんが、袋の上から腹のあたりを踏んづけるように蹴った。
一瞬『袋』の動きが止まったけど「ウ~!」とすごい唸り声を上げながら、また暴れ出した。

Sさんは腹のあたりを、構わず蹴り続けた。
それでも『袋』は暴れ続けた。
やがてKさんも加わって、二人で滅茶苦茶に蹴り始めた。

『袋』の動きが止まった。
その時なぜか男は頭を振って、俺に気が付いた。
それまですごい形相で暴れていた男が、急に泣きそうな顔で俺を見つめた。

Sさんが「袋に戻せ」と言うと、Kさんが男の肩のあたりを足で抑えながら、袋を引っ張って、男を中に戻した。
今でもその光景は、スローモーションの映像のまま、俺の記憶に残ってる。
男は袋に戻されるまで、ずっと俺を見てた。
一生忘れられない。


82
Kさんが袋の口をきつく縛るのを確認すると、Sさんは更に数回、袋を蹴った。
「これくらいかな。ころしちゃまずいからな」
Sさんはそう言って、俺を見た。
「お前、こいつの顔を見たか」
「いえ…突然だったんで、何が何だか」
そう答えるのが、精一杯だった。
その時は本当に、どこかで見たような気がしたけど思い出せなかった。

SさんとKさんは、再び動かなくなった『袋』を担ぎ上げた。
それまでと違うのは、真ん中に俺が入ったこと。
もう中身を知ってしまったので、一連托生だ。

それからその13号坑道ってやつを延々歩いた。
今までの広い通路とはうって変わって、幅が3mも無いくらいの狭い通路だった。

右手は常に壁なんだけど、左手は時々、下に下りる階段があった。
幅1mちょいくらいの階段で、ほんの数段下りたところに扉がついてた。

何個目か分かんないけど、Sさんがある扉の前で止まれって言った。
そこもまた『帝国陸軍』。
『帝国陸軍第126号井戸』って書いてあった。
(128だったかも。偶数だった記憶があるけど忘れた)
それでSさんに言われるまま、中に入った。
中は結構広い部屋だった。
小中学校の教室くらいはあったかな。
その真ん中に、確かに井戸があった。
でも蓋が閉まってるの。
重そうな鉄の蓋。
端っこに鎖がついてて、それが天井の滑車につながってた。
滑車からぶら下がっているもうひとつの鎖を引いて回すと、蓋についた鎖が徐々に巻き取られて、蓋が開いてく仕掛けになってた。


83
オレは言われるままに、どんどん鎖を引っ張って、蓋を開けていった。
完全に蓋が開いたとこで、二人が『袋』を抱え上げた。
もう分かったよ。
この地底深く誰も来ない井戸に、投げ込んでしまえば二度と出てこないもんね。
でもひとつだけ分からない事があった。
なんで「生きたまま」投げ込む必要があるの?

二人は袋を井戸に落とした。
ドボーン!水の中に落ちる音が、するはずだった。
でも聞こえてきたのは、バシャッて音。
この井戸、水が枯れてるんじゃないの?って音。
SさんとKさんも、顔を見合わせてた。

Sさんが俺の持っているマグライトを見て顎をしゃくってみせ、首を傾げて井戸を覗けってジェスチャーをした。
マグライトで照らしてみたけど、最初はぼんやりとしか底まで光が届かなかった。
レンズを少し回して焦点を絞ると、小さいけど底まで光が届いた。
光の輪の中には『袋』の一部が照らし出されてる。
やっぱり枯れてるみたいで、水はほとんど無い。

そこに手が現れた。
真っ白い手。
さらにつるっぱげで、真っ白な頭頂部。
あれ、さっきの『袋』の人、つるっぱげじゃ無かったよな。
ワケが分かんなくて、呆然と考えていたら、また頭が現れた。


84
え? 二人?
ますます頭が混乱して、ただ眺めてたら、その頭がすっと上を向いた。
目が無い。
空洞とかじゃなくて、鼻の穴みたいな小さい穴がついてるだけ。

理解不能な出来事に、俺たちは全員固まってた。
しかも2人だけじゃ無さそうだ。
奴らの周囲でも、何かがうごめいている気配がする。
何だあれ? 人間なのか? なぜ井戸の中にいる? 何をしている?


その時、急に扉が開いて、人が入ってきた。
俺は驚いてライトを落として、立ち上がってた。
SさんとKさんも。

入ってきたのは、Nさんだった。
Nさんは俺たちを見て、怪訝そうな顔をした。
「S、もう済んだのか」
Sさんは少しの間、呆然としていたけど、すぐに答えた。
「済みました」
Nさんは俺たちの様子を見て、俺たちが井戸の中身を見た事を悟ったみたいだった。
「見たのか、中を」
俺たちはうなずきもせず、言葉も発しなかったが、否定しないことが肯定になった。
「さっさと蓋閉めろ」
言われて俺は、慌てて鎖のところに行って、さっきとは反対側の鎖を引いて回した。
少しずつ蓋が閉まっていく。
「余計な事を考えるんじゃねえ。忘れろ」
そう言われた。
確かにそうなんだけど、ぐるぐる考えた。


85
ころしちゃまずいって、Sさんは言ってた。
Sさん自身も、なぜころしちゃだめなのか、知らなかったんだと思う。
生きたまま落とした理由は?
生きたまま……あの化け物のような奴らがいるところへ。
考えたく無くなった。

俺たちは来た道を戻り、車で道に出た。
今度はSさん、Kさんは、Nさんのベンツに乗っていった。
そしてそれが3人を見た最後になった。

俺は思い出していた。
あのとき『袋』に入っていた男の顔を。
会長の3男だった。
出来の悪い男というウワサだった。

俺は2、3回しか顔を合わせた事が無かったが、大した事無さそうなのに、威張り散らしてヤな感じだったのを覚えてる。

だからといって、会長の息子をころすのはアウトだよ、氏体を隠したっていずれバレる。
それでも出来るだけバレないように、俺を使って運んだんだろうけど。

あの出来事から2週間くらいして、Nさんが居なくなった、お前も姿をくらませって、Sさんから電話があった。
バレたんだ。
会長の息子をやったのを。

組織から距離をおいていたのが幸いして、俺は逃げ延びる事ができた。
SさんやKさんがどうなったのかは知らない。
あれから数年、俺は人の多い土地を転々としている。
これはあるネットカフェで書いた。

もうすぐネットカフェも、身分証を見せないと書き込めなくなるらしい。
これが最後のチャンスだ。
組織の人たちがこれを知れば、どこから書いたのか、すぐに突き止めると思う。
だから俺はこの街には、二度と戻ってこない。


86
誰かあの井戸を突き止めて欲しい。
なぜあの井戸に、組織なんかが鍵持って入れるのか。
そうしたら俺の追っ手は、皆捕まるかも知れない。
俺は逃げ延びたい。これからも逃げ続けるつもりだ。



一体何がいたんだろうな・・・・


87
最後は都市伝説みたいになってしまったが俺からはこれで終わり

ぽまいらも怪談や都市伝説知ってたら教えてちょ


88
なにこれ凄いおもしろい


131
まぁあれだよ 正直「地下の井戸」は完全なる創作だろう。
水を差して申し訳ないないがね。

だが東京地下迷宮と俗に言われるように昔の地下壕や建設中止になった地下鉄線が残っていたり、母が子に呪術を教えていたりした奇妙な文化が一部で存在したのは事実だ。

この国の歴史には闇深い部分が沢山ある



引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1466617900