時空のゆがみ

「人間や空間を吸い込む屋根裏に現れた異次元の穴」

小さな頃に、いたずらするとよく閉じ込められた屋根裏。 光も入らず真っ暗闇で不気味な場所なのだが、ある日その屋根裏で信じられないような奇妙なことが起こった――

幼稚園児の時に、悪いことをしてよく屋根裏の物置に閉じこめられた。
窓がないので当然真っ暗な上に異様に寒くて、園児だった俺にはあまりに怖かったんだが、
5回目位にはもう慣れてしまい、入れられても「早く出してくれないかな」としか思わなくなったので、母は別のお仕置き方法を考え始めていたんだそうだ。
なんでもっと早く考えてくれなかったんだ、と今になって思う。


ある夏の日、また母に屋根裏に閉じこめられた(理由は忘れたが)。その時は怖いどころか、
「暑さが凌げる」とさえ思い、内心喜びながら(もちろん嫌がるふりをして)屋根裏に上がった。

入れられてから30分位してからだったと思う。
その時俺は壁に寄りかかって体育座りをしていた。
硬い木の床の上でずっと同じ姿勢だったので、流石にケツが痛い。
座り直そうとして体を起こすと、何かイヤな-部屋の空気が一瞬で腐ってしまったようなー感じがした。

戸惑ってあたりを見回したが、特に周りが変わった気配もない。
というか、屋根裏の中は本当の暗闇なので何か見えるはずもない。
仕方ないのでまた壁に寄りかかろうとしたところで、俺は異変に気付いた。

俺はそのまま後ろに倒れてしまった。

さっきまで壁のあったところに別の空間が広がっている。

手を伸ばしても何もなく、床さえもない。

そして、一番不気味だったのは、その空間が明らかに屋根裏の空気を吸い込んでいたことだ。

とにかく怖かった。
怖すぎて叫べさえしなかった。
叫んだらその穴に吸い込まれそうな気がしたからだ。
俺は母が屋根裏から出してくれるのをただひたすら待った。
そして、しばらくしてからやっと床の扉が開いて、どうにか落ち着いた。

その後10年ぐらい経ち、何故かそのことを急に思い出し、自分の家について、周りの人に聞いてみた。
何でも、この家が建つ前に、ウチの敷地で目撃されたのを最後に、
遺留品(靴とか)を残して消えたホームレスが何人かいるらしい。

もしかしたらここには時空のゆがみがあって、
その人たちはそこに吸い込まれたのかも知れない。

そして、もしあの時あの穴の中に入って行ってたら俺は………