中学の時のアカンと思った話。

夏休み直前、半ドンだったので帰宅部の俺は昼飯を食って即帰った(友達もいなかったんで…)。
いつもの帰り道で、急に頭がぼーっとして、近くの小さい雑貨屋の影に避難した。

備え付けの自販機でコーラか何かを買って、自販機の隣の段差に座り込んで、
アスファルトから蜃気楼がゆらゆら揺れるのをこれまたぼーっと見ていたら
なんとなく蜃気楼に合わせて世界の全部がゆがんでいくような気がして、怖くなった。
以前頭はしゃっきりしないけれど、とりあえず帰ろうと思って立ち上がって、何かで頭を打った。

隣の自動販売機が中央からくにゃりと90度に曲がって、俺の頭にかぶさっていた。

はぁ?
と思って、垂れた自販機の頭を避けて立ち上がったら、道の先のカーブミラーや電柱が全部曲がっていた。
しかも全部俺に向くように曲がっていたのを覚えてる…。




そして、いちばん向こうの電柱から、これまた腰からぽっきり真横に90度折れた、
ハゲで白い肌着だけのおっさんが
手を振りながらすごい勢いでこっちに走ってきて。

これヤバいだろ、と考えた時には身体がもう雑貨屋の中に入っていて、
入り口のドア(手動)を力いっぱい押さえつけていた。

何してん?
と店主のオバハンに訊かれて、ゼェハァしてて1~2分くらい喋れなかったけど、その間に冷静になって、
ドアのガラスから外を見渡したら、オッサンはもういなくて、折れ曲がった世界も元に戻ってた。

オバハンに話したら、「それ熱中症じゃ」と一蹴。
冷えピタを貰った。
ついでに黒い安い傘(300円くらい?)を買った。

レジで会計してる途中に外からすごい音がして、出てみたら交通事故。
何かを避けるように何度も曲がったタイヤ跡が道に。

オバハンが警察に電話してるのを尻目に、俺はどこかでオッサンが見ているような気がして、
もうとにかく全速力で帰った。

次の日以降、少し遠回りだが別の道を使うようになった。
親の車で3~4回その道を通った時もあるが、特に何もなかった。

その道で別の事故が起きたとかそんなこともなく、なんとなくただあの日だけ、
オッサンはあの道にいたんだと思った。

思い出すたび、次はまた別の道で出会ってしまうかもしれないという妄想が俺を襲う。