寺生まれのTさん

「婆ちゃんの守り刀とTさん」

「寺生まれ」…それは人智を超えた不可思議な霊能力を持った人間に与えられる称号――

最近、俺の周りでおかしな気配を感じる…。親父に相談したら「この刀を枕元に置いておけ」といわれ、その通りに実践してみたのだが―― 

最近、夜寝付けなくなった。
夜中になにかがおれの部屋をうろついているのだ。
親父に相談したところ、一振りの日本刀をみせ、
それを枕元に置けというのだ。

「それはお前の婆ちゃんがどこからか貰ってきた守り刀だから
きっとお前を守ってくれるはずだ」

正直信用できなかった。
婆ちゃんは生前俺に厳しかったからだ 。

少し起きるのが遅かっただけで、
洗面器に貼った水をぶっかけられたこともあった。

ともかく、その刀を枕元に置いて寝てみた。
はたして夜中、またもうろつく気配が現れた。


やっぱりかとおもいながら朝までやりすごそうとしていると、
その気配が俺の頭の近くで止まった。
おれの顔を覗きこんでいるらしい。

もう怖くて、逃げたかったんだが、お約束の金縛りで動けない。
ふと気配がなくなったので、恐る恐る薄目を開けてみると
真っ黒な顔をした大男が不気味な笑みを浮かべていた。

もうだめだと思ったその時

「おいおい、どうせ覗くなら野郎じゃなくてきれいな姉ちゃんにでもしたらどうだい?」

突然ドアを開けて入ってきたのは、
近所でも有名な寺生まれで霊感の強いTさんだ!!

大男はTさん目掛け猛然と突っ込んでいった。
しかしTさんは一向に慌てずに気をためていた

「いくぜ、破ぁーー!!」

青白い光弾が大男目掛けて放たれた。
しかし大男は両手をクロスさせて光弾を受けとめた。

「やれやれ、しぶといやつだ。だがこっちにはこれがあるんだ」

いつの間にか守り刀を構えていたTさんは大男に切りかかった。
大男は光の束になって消えていった。

「ありがとうTさん、でもどうしてここに?」

Tさんは服の袖を絞って、水をだすと、

「婆さんにいっといてくれ、今度はもう少し穏便に起こしてくれとな」

寺生まれって凄い。
俺は久々に婆さんの墓に手を合わせながら、改めてそう思った。