笑える霊体験

『なにがあかんねん!』

数年前にちょっと入院したときのこと。

夜中にふと目がさめると、おっさんが覗き込んでいた。
一瞬痴漢かと思ったけど、よく見たらおっさんは透けていた。
でも歯がすごい出っ歯で全然怖くない。
眠かった私は、関西人でもないのに関西弁で

「あかん。あかんわ!」

と言って再び寝た。
意識を失う直前に、おそらくおっさんが言ったであろう

「なにがあかんねん!」

という悲しいつぶやきだけが聞こえた。
それからしばらく入院したけど、おっさんを再び見ることはなかった。

『カラオケルームは霊で満員』

バイトで一緒にシフト入った奴が
「私の友達、酔うと幽霊見るから一緒にお酒飲むの怖いんです~」
って言うのよ。
俺の友達がAで、友達の友達がBとする。
詳しく話しを聞いてみたら、どうやらこないだAとBの二人でカラオケに行ったらしいのね。
その前にしこたま飲んでたらしくて、二人ともテンションが高かった。
カラオケルームの部屋をBが開けた瞬間、

「わー!もういっぱい人が来てるねー!」

と大喜びしながら座布団を用意し始めたらしい。
Aから見たらBと自分以外、部屋には誰もいない。
しかしせっせと部屋(掘りごたつタイプ)に座布団を並べ、席順まで指示しているB。
そういえばシラフの時もたまにお化けの話をしてくれたらしいが、目の当たりにしたのは初。
gkbrしながら「ここに座って!」と言われた場所に座った。
酔っているから勘違いしてると思い込むことにして…

Bは見えない誰かと楽しそうにしており、Aは怯えながら歌った。
すると数曲目のイントロでBが「頑張ってー!」とか言いだしたらしいのよ。
Bが歌う様子は無い。Aが入れた曲でもない。
流れているのは聞いたこともない曲で、Bはタンバリンを打ち鳴らしながら
「いいよー!大丈夫歌えてるよー!」と励ましてたらしい。
どうやら、恥かしがってる様子の「見えない人」は、何度もBに励まされながら歌いきった(んだと思う)。

Aの酔いはその時点ですっかり醒めていたことは、お察しの通り…
怖くなって3時間の予定を1時間にしてもらい、カラオケを出てからBに
「部屋に何人居たっけ?」と聞いてみた。
Bはゲラゲラ笑いながら「20人くらいかなー!」と答えたそうな。

AとBの通された部屋、5人用…
咄嗟に思いついたのは、なにわ小吉の『王ロバ』の『もし1部屋に百人』の図…
さぞ狭かっただろうなと俺は思った。


『将棋好きな半透明おじいちゃん』

とある保養センターに泊まったとき。
娯楽室みたいなところで将棋をやってるおじさん二人の後ろに、半透明のおじいちゃんがいた。

初めは黙って二人の勝負を見ていたおじいちゃんだけど、だんだんいらいらした感じになってきて、駒の動きを見ては首を振ったり、顔をしかめたり。一所懸命に「ここだ、ここだ」と指をさしたりもしてた。

でもおじさんには霊感が無いようで、全然気づいて貰えない。
頭を抱える半透明おじいちゃん。
結局、おじいちゃんが後ろについていたおじさんは負けた。
苦笑いして「いやー参ったね」 と頭をかくおじさんの後ろで、トホホという顔をするおじいちゃん。そのまま消えていった。

と思ったら、顔だけひょっこり出して「もう一番やれ」と煽り始めた。
でもおじさんはやっぱり気づかず。
「風呂でも浴びるかー」と言って、娯楽室から出て行った。
おじいちゃん、肩を落としておじさんの後をついていった。

あの半透明おじいちゃんは、おじさんのお父さんだったのだろうか。
生前、もっと将棋を教えとくんだった、と後悔してたかもしれない。
おじさんの勝負中、おじいちゃんがやたらと生き生きしてて、勝負に入れ込んでいる姿にちょっと笑った。