
『鎌使いのオヤジと陸の孤島にある山奥の集落で起きた面妖な稲荷女事件』怪談
報告者の住んでいる地元は周囲を山で囲まれた陸の孤島にある集落で、水道設備が整ったのも1970年代というかなりの田舎なのだとか。そんな人の手のあまり入らない自然豊かな報告者の住む地方では、不思議で奇妙な怪異が2つほど語り継がれているそうで――(おうまがタイムズ)
その1
うちは周囲を山に囲まれた40戸足らずの集落で、町へは山を二つ越えねばならず
最寄の集落さえも山一つ向こうという陸の孤島。
水道が通ったのが1970年代というから大正から昭和初期であろう当時の田舎ぶりは推して知るべしといったところ。
人家の集まるエリアから最寄の集落への道は現在も一車線の寂しい道なのだが、
その途中、2km程行った所にぽつんと一軒の家と小さな池があった。
現在は家は無く池だけがあり鯉を飼育販売しているのだが、当時はそこですっぽんを飼っていたらしい。
ある日の夕暮れ、すっぽんを買い求めに人がてくてく山を越えてやってきた。
「すんませーん」
家に向かって声をかける。すると、
「すっぽん、ありまへーん」
池の方から声だけが返ってきた。
なんとなしに人影を探してみたのだが見当たらない。
「すっぽん、ありまへーん」
と、また声がする。
仕方が無いので諦めてその人は帰ってしまった。
そんな事が何度かあり、皆はすっぽんが食われるのを嫌がって返事をしたのではないかと噂した。
以上、ほんとに地味だけど実在する場所での話だったので自分にとっては興味深かった。
この池は10年以上前に台風に壊され、横を流れる川と一つになってしまい、
現在は道路拡張工事のために跡形も無く道路の基礎部分に姿を変えている。
その2
祖母の茶飲み友達である、Mさんとこの爺さんの親父さんが山へ下草刈りに出掛けたまま
夜になっても戻らず、総出で山狩りの仕度をする大騒ぎとなった時の話。
親父さんが下草刈りを終えて帰宅する途中、稲荷神社のそばに差し掛かった所で見知らぬ女がうずくまっていた。
そのお稲荷さんは端午の節句に子供相撲を奉納したりと住民にはなじみの深い場所だが、
当時は村の中心と町とを結ぶメインの道(一車線)からは少し外れて山へ入った人気の無い寂しい所だった。
「どないしはりました?」
声をかけてみる。
しかし、女は俯いたまましくしく泣くばかり。
そこで親父さんは考えた。
見れば色白で身奇麗な格好をしている。
俯いていてよくわからんが随分な美人の様だ。
こんな女がここにいるのは場違いだ。そうだ俺はいま狐に化かされているに違いない。
そういえばここはお稲荷さんの近くじゃないか。
よし、と鼻息荒く腹を決めた親父さんはそっと女に歩み寄り、
"きゃいっ"
と持っていた鎌で女の足を引っ掛けて手繰り寄せがっしり足をつかまえた。
そして後ろ手に女をずるずると引きずりながら揚々と帰宅の途についた。
しかしその時異変が起きた。
同じところをぐるぐる回るばかりで何時まで経っても家に辿り着けない。
いよいよ本気で化かしにかかったか、だがまけるもんかと親父さん。
根性で歩く歩く。
とうに日は沈み、辺りはすっかり暗くなってしまったが親父さんは諦めない。
捕まえた狐を離さず、ひきずりひきずり歩く歩く。
苦労してようやく家に辿り着いた親父さんを迎えたのは、
心配顔で山狩りの準備を進めていた集落の住民一同。
さっそく親父さん得意満面の顔で一部始終を話しだす。
話し終えた頃、皆の視線は何故か生温かいものに変っていた。
親父さんの手には、わさわさと枝葉をつけた一本の青竹がしっかりと握られていた。
以上、何が怖いって見知らぬ人が居て不自然だからと鎌で斬り付けたことに何も突っ込まなかった皆と当時の自分が怖い。
稲荷神社は現在、周囲の雑木林が伐採された事に加えてメインと呼ぶに相応しい二車線の道路が真横に敷設され、晴れて開けた場所となっている。
おしまい。
祖母の茶飲み友達である、Mさんとこの爺さんの親父さんが山へ下草刈りに出掛けたまま
夜になっても戻らず、総出で山狩りの仕度をする大騒ぎとなった時の話。
親父さんが下草刈りを終えて帰宅する途中、稲荷神社のそばに差し掛かった所で見知らぬ女がうずくまっていた。
そのお稲荷さんは端午の節句に子供相撲を奉納したりと住民にはなじみの深い場所だが、
当時は村の中心と町とを結ぶメインの道(一車線)からは少し外れて山へ入った人気の無い寂しい所だった。
「どないしはりました?」
声をかけてみる。
しかし、女は俯いたまましくしく泣くばかり。
そこで親父さんは考えた。
見れば色白で身奇麗な格好をしている。
俯いていてよくわからんが随分な美人の様だ。
こんな女がここにいるのは場違いだ。そうだ俺はいま狐に化かされているに違いない。
そういえばここはお稲荷さんの近くじゃないか。
よし、と鼻息荒く腹を決めた親父さんはそっと女に歩み寄り、
"きゃいっ"
と持っていた鎌で女の足を引っ掛けて手繰り寄せがっしり足をつかまえた。
そして後ろ手に女をずるずると引きずりながら揚々と帰宅の途についた。
しかしその時異変が起きた。
同じところをぐるぐる回るばかりで何時まで経っても家に辿り着けない。
いよいよ本気で化かしにかかったか、だがまけるもんかと親父さん。
根性で歩く歩く。
とうに日は沈み、辺りはすっかり暗くなってしまったが親父さんは諦めない。
捕まえた狐を離さず、ひきずりひきずり歩く歩く。
苦労してようやく家に辿り着いた親父さんを迎えたのは、
心配顔で山狩りの準備を進めていた集落の住民一同。
さっそく親父さん得意満面の顔で一部始終を話しだす。
話し終えた頃、皆の視線は何故か生温かいものに変っていた。
親父さんの手には、わさわさと枝葉をつけた一本の青竹がしっかりと握られていた。
以上、何が怖いって見知らぬ人が居て不自然だからと鎌で斬り付けたことに何も突っ込まなかった皆と当時の自分が怖い。
稲荷神社は現在、周囲の雑木林が伐採された事に加えてメインと呼ぶに相応しい二車線の道路が真横に敷設され、晴れて開けた場所となっている。
おしまい。


コメント
コメント一覧 (5)
もってたのが竹だったとか日本昔に出てきそうななんともいえない読後感がたまらないw
昭和30年代まであったけど その後は皆無
なんかさみしい
そういう時は煙草を吸うかマッチを刷る。物の怪は、紫煙や硫黄の匂いを嫌うらしい。
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