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『逢魔が時』『やっと入れた』『電車で俺の肩にもたれているモノ』

逢魔が時、遊んでから家に帰ると、真っ赤な夕日が落ちかけ暗闇と混ざり合っている台所にお母さんが立っていた。電気もつけずになにをやっているんだろうといぶかしく思ったのだが―― 

『逢魔が時』

小学生の頃。

夕方、遊びから帰ってきて玄関あけたら台所に母がいた。
「ただいま~!」
って言ったんだけど反応なし。
あれ?お母さん怒ってる?
何か悪い事したっけ?
と思いながら台所に入って、 ノド渇いたから冷蔵庫からジュースとって、飲みながら母をチラチラ見てた。
なんか違和感感じて、よく考えたらさ、お母さんシンクの所に立って皿洗ってるのかと思ってたら、水道出てないのね。
手も体も動いてもいないし。
ただ、無言でシンクの所に突っ立ってるの。
こっちに背をむけて。
真っ赤な夕日が落ちかけて、暗くなってる台所で。電気もつけずに。

その異様な雰囲気にゾッとして、リビングに行ってテレビ見ようとしたら、「ただいま~」って玄関から母が入ってきた。
ずっと庭で花とか野菜の世話してたんだって。
じゃあ台所に居たの…何?誰?
って思ったら怖くなって、泣きながら母に抱きついた。

台所の母の顔、覗き込んだりしてたら…
と思うと今でも鳥肌がたつ。


『やっと入れた』

声聞いたり気配感じたり本当些細なことばっかりなので、私的に一番嫌だったやつを…

中学の時毎日のように金縛りにあう時期があって、ある日いつものように金縛り解こうとしたら全く解ける気配がなかった。
反対に何かが体の中を這いずるようなゾワゾワゾワっとした感触がして、それがおさまった瞬間頭の中に

「やっと入れた」

という男の人の声がした。
気づいたら朝で、その後は何もないから大丈夫だとは思うんだけども…

あとは怖い体験とは違うかもしれないが、
小学生の時は夢遊病だったらしく夜中に電気もつけず台所で冷蔵庫指さして笑ってたり、夜中に窓開けて窓際に立ってたり(窓際にベットを置いてたのであと一歩で落ちてた)してた。
どっちも母が発見してもちろん私は覚えてないですけど。
後でわかったのはその窓の先に井戸があって、昔そこで女の子が死んでたってこと。


『電車で俺の肩にもたれているモノ』

昨日、ちょっと早めに帰れたのでゆっくり帰ろうと普段乗らない普通電車に乗った。
座れるかなと期待したのだが車内はそこそこに混んでいて、立っている人もちらほらいた。
こりゃ座れないなーと思って横を向いたら、端っこの席がぽつんと空いていた。
車椅子用のスペースがあって狭いけど、三人ぐらいは普通に座れそうな席だった。
でもそこには女の子一人しか座ってなかった。立っている人もいるのに、だ。
まぁ誰かが座ってて降りた直後なんだろう、と納得して俺はその子の隣に座った。
女の子は高校~大学ぐらい。眼鏡かけてて格好はごく普通。何やら携帯ゲームに熱中していた。
その子が危ない子だから空いてるのかなぁとも考えたけど、俺が隣に座っても気にしていないようだった。
その後一駅経っても特に何もなかったので疲れもあり、俺はうつらうつらと眠り始めた。
どれぐらい経っただろうか。俺は右肩に重みを感じて目を開けた。
あの女の子が寝ちゃったのかなぁ、なんて思って横目で見たら、視界には前傾姿勢でゲームを続けてるあの子。
あれ、じゃあ俺の肩の重みは何?

恐る恐る振り向いた先に、髪の毛をざんばらに乱した女がいて、俺の肩を掴んでた。

俺は慌てて振り解こうとしたけど、何故は身体が動かない。
もうパニック状態で慌てる俺をその女はじぃーっと見つめてた。
俺は隣の女の子に気付いてもらおうと思って何とか身体を動かそうとして――気付いた。
その女は、女の子の背に乗って俺を掴んでいる事に。

そして女の子の背中には女以外の得体の知れないモノがべったりへばりついていることに。