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男4人でサーフィンに行った時の話です。

あれから3か月くらいかたって、客観的に考えたいので聞いてください。
長くなりそうですみません。

そこはたまに事故とか出る場所だそうですが、自分たちは結構長くやってるし、
危ないと感じた事がなかったので、甘く見ていました。
台風が近づいているので海は鉛色でしたが、
この夏は忙しくもう来れそうにないので、
みんなでボードを担いで海に向かいました。

僕の友人をA、B,Cとします。
夏なのに水温が結構低くて、
昼前には僕とAは上がる準備をしていました。
C,Bはまだやるんだと二人で沖へ出ていきます。

風も波も荒くなってきて、呼びにいこうとAと相談していると、
Bが顔色を変えてすごい勢いで走ってきました。

「Cが見えなくなった」

と彼は言うのです。

「その辺を潜ってみたけど、居ない・・・」

とBは歯を鳴らしています。
僕達も血の気が引くのが分かりました。

「戻ってもう一回探そう。この辺に人はあまり居ないし溺れた時って早くしないと…」

Bが僕の腕をひっぱります。
サイアクなことに、 早朝はいた人も、
さっさと切り上げて帰ってしまっていたのです。
僕は探しに行く決心をし、Aに上の車に戻って、
携帯で助けを呼んでもらう事にしました。




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海の水は朝の比じゃなく冷たくて、すぐに筋肉が強張って、
思うように前進できません。

「どこらへん?」

僕は頭から波をかぶりながら一緒にきたBに聞きます。

「ここらへんだよ」

僕は思いきってもぐりました。
日差しが強くないので、視界はとても悪かったけど、
自分の頑張りで友人がどうかなると思って、
息の続く限り辺りを見まわしました。

何も見えません。
水面に上がろうとして、僕は足に重みを感じました。
何かが絡まったのか激しく足をばたつかせたけど、とれません。
既に息を使いきっていたので、
本当に頚動脈とかすごい事になって、
俺も溺れるのかと思いました。
そして、絡まった何かは、すごい勢いで僕の足を引っ張りました。
悪意があるやり方でした。
そして、下を僕は見てしまいました。

それは一緒にきていたBでした。

驚きのあまり息を吐いてしまって、
頭が真っ白になりました。
次に気がついた時、僕はボードにしがみついていました。
隣に居たのはCでした。

「お前、大丈夫だったのか」

「お前こそな」

と言われてしまいました。
とにかく、僕達は息も絶え絶えな感じで岸に戻りました。


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「C、大丈夫だったのか」

岸にいたAが言いました。

「どういう意味?それよりお前、Bがいなくなったんだ。助けを呼ばないと。
俺、あいつのこと探したんだけど、沖に流されちゃって…。
帰る途中でこいつも溺れてたからびっくりしたよ」

それは、Bが僕達に言ったことの悪質な再現でした。

結局、Aが呼んだもともと 「Cのための捜索隊」は、
「Bのため」のものになりました。

Bは、元気に帰ってきはしませんでした。
そしてタイミング的に、彼が僕達を呼びに来るのはおかしいのです。
一緒に探しにいこうと僕の腕を引いた
Bの手が冷たかったことを思い出します。
その時は海につかっていたせいだと 思ったのですが。

Bは僕という仲間が欲しかったのでしょうか。
友達だと思っていたのですが、なんだか複雑です。
今でも、足を引かれたときの夢を時々見ます。
あざとかはできませんでしたが、 変な話ですけど、
つかまれた部分だけに体毛が生えなくなって、気味が悪いです。


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Bはしんだの?


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えーっと、
Bは先に氏んでたので、道連れが欲しくて「Cが遭難した」ってウソついてお前さんを引っ張り込もうとしたってこと?


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書いたらまずかったのでしょうか。無言電話、かかってきました。
波の音がしたように思います。


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二人に連絡をしました。無言電話が続くからです。
まだ頭に血が上っていたようで、分かりにくい話を読んでくれた人、
有難うございます。

僕がここに書いたこと、そしてその後のことを二人に話すと、今から海に行ってみることに なりました。
はっきり言って恐いし、できるなら行きたくありません。
でも、あの日、砂浜でスーツの中で膨らんでいたあいつに会いに行かなければなりません。
お前もここ読んでるのか。今から会いに行くから、待っていてくれ。
それでは、行って来ます。







引用: 不可解な体験、謎な話~enigma~ Part18