悪霊と稲荷

初めての一人暮らし、家賃は3万円弱なのに2DKで小奇麗なお得物件だった。だが、暮らし始めて1ヶ月経った頃、風呂場で奇妙な事が起こり始めて――(おうまがタイムズ)



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これは俺の頭痛のお話。

初めての独り暮らしで田舎のアパートを借りたんだ。
家賃3万ちょっとの2DKだったんだが値段の割りに小奇麗で、
下見したときにラッキーって心の中でガッツポーズしたのを憶えている。
仕事が忙しくてあまり家に帰れず、
荷解きも半分くらいしかできていない状態で1月が過ぎちゃったんだ。
引っ越して一ヶ月もすると定時で家に帰れるようになり、やっとまともにくつろぐ時間もできてきた。
俺は基本的に風呂は貯めて入るのだが、
夏に差し掛かったこともありシャワーで済ませることが多くなった。
シャワーを頻繁に使い出して、あることに気がついた。

シャワーヘッドがよく落ちる。

最初はちゃんと固定していないからだと思い、
注意してはめ込むよう気をつけたのだがそれでも落ちている。
そんなことが続くと、ずぼらな俺は落ちたらそのまま放置し、
使うときに掛けるようにしていたのだが…

ある夏の夜、俺はほとんど水のようなぬるいシャワーを浴びて頭を流していた。
すると、途中で何か音が聞こえる。
ゴボゴボと、なにか配水管を流れるような音が上のほうから聞こえてくる。
なんだろうと思いながらも泡を洗い流すことに専念し、お湯を止めて顔を拭っていたら
後頭部に衝撃と痛みが。

落ちてきたんだ、シャワーヘッドが。

地震も何もなく、フックに安定して掛けていたシャワーヘッドが、落ちる。
そこで遅まきながらも絶対変だと思いだした。
腑に落ちないが、とりあえず頭を拭いてバスルームを出て、ドライヤーで頭を乾かしていると、突然頭痛が襲ってきた。
夏風邪でも引いたかなと思い、その日は早めに寝る事にした。
夜中、暑くて目が覚め起き上がるとまだ頭が痛い。

そこで気がついたのだが、鼓動のたびに、痛みが襲ってくるたびに何か見える。
ドクンと疼くたび、脳裏で何かの映像が浮かぶ。
最初はよく分からなかったのだが、
その日からずっと頭痛が続いてしばらくするとその映像が何かわかった。
顔が近づいてくる…


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最初は何か物体、1週間くらいで顔と認識し、翌週には女らしいとわかった。
気味が悪いなとは思いつつも、ロキソニンを呑んで様子を見ていた。
元来頭痛もちでもなんでもなかったのだが、
3週間を過ぎここまで続くとさすがになにか病気ではないかと疑い検査を受けた。
結果は特に異常もなく、ただの偏頭痛でしょうということで薬をもらって終了。
なんとなく腑に落ちないが、医者の言葉を信用して退散した。

家に帰り、ソファでぼぉっとしていると、ふとこんな思いがよぎった。
このまま頭痛が続いて、あの顔がもっと近づいて迫ってきたらどうなるのか。
言い知れぬ恐怖を感じ、困ったときの神頼みということでお稲荷さんにお願いに行く事にした。

神社に近づくたび、あの頭痛が激しくなる。
しかも心なしかこの一時間ほどで急に近づいているような気がする、いや絶対近づいている・・・!
怖くなり、帰ろうかと思ったが、家に帰ったところで顔が消えるわけでもなく半ば意地で参拝した。
線香を買い、家から持ってきた白米と油揚げを狐さんにお供えし、ご本尊にお願いする。
陽が傾きかけ、帰ろうと階段を下りきったその時
なんとなく背後を振り向いたら、上段のほうになんか居た。

太陽ですぐ目を瞑ってしまったが、その一瞬でそれがあの顔だとわかった。
階段は何十段もあり、遠くて普通ここからは分からないはずだが俺は確信していた。
顔はゆっくりと後ろのほうへ引っ込んでいく。

背筋が凍るというのを初めて体感し、急に怖くなって人の居るほうへ土産物屋の方へ走った。
人が居るというのは安心するもので、すぐに落ち着いた。
その時気がついたのだが、もう頭痛がしないし、あの顔も明滅しない。
びくびくしながら家路に着き、不安ながらも早々に床に就き、その晩に夢を見た。



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夕暮れの空に大麦畑みたいな背の高い草の茂る金色の草原、
そこに大きくて白い雲のような塊があり、背の高い草はそちらのほうへなびいている。
あの顔が、その白い塊の表面にくっついていた。
よく見ると埋もれかかっていて、じっと見ていたら目が合った。
次の瞬間、白いものに完全に埋もれてしまった。
なんだか猫の足の裏のような匂いに包まれながら、俺の視点は草原をさまよう。
そこで目が覚めた。

その日以来、シャワーヘッドが落ちる事はない。
頭痛も、あの顔もない。
お稲荷様が助けてくださったんだと思い、以後毎年欠かさずお参りして感謝している。
ちなみにその日以来やたら猫に甘えられるようになった。
賃貸でペット禁止なんだけど、駐車場に野良・飼い猫が集まってきて俺を見るなり走ってくるので周囲の目が厳しいw


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お稲荷様のご利益、良かったね
しかし猫に好かれるのはどうしてだろう?
狐と猫は仲悪そうなのに…


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猫に関してはよくわからないけど、そういえば感覚が鋭くなった気がする。
耳がやたら聞こえるし、嗅覚も鋭くなったよ。
あんまいいことばかりじゃないけどさ。
コーラは痛いし、プラスティックは臭いし。


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>>664
お稲荷さんにお礼してるのは自然と?
お礼しないで終わっちゃうと逆に酷い目にあっていたかもな
お稲荷さんに死ぬまでお参りってのは無理になるかもしれないから、
土地を離れることになったら、そのときから○○に離れますありがとうございました
みたいなこと言っておいたほうがいいかも
縁切りってわけじゃないけど、お稲荷さんに対しての礼儀作法はよくわからんから調べてみてくれ
蔑ろにしていいタイプの神様じゃないみたいだから(だからって自分の家でお祀りするのも難しいからお勧めしない)


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>>666
亡くなった祖父が生きていた頃は一緒によく行っていたので、なんとなくお稲荷さんにすがりました。
ふもとの売店のゆずせんべいが好きなので、この県に居る限りはずっとお参りするつもりです。
忠告通り、ここを離れるときは契約を清算?することにします。
あれから怖い目にはあっていないけど、やっぱりお参りして階段下った後は怖くて後ろ向けないorz






引用: ほんのりと怖い話スレ その85