27
俺が子供の頃、母方の祖父が養鶏場をやっていた。
祖父が氏んで今は人手に渡ってしまったが、
まだ祖父が元気だったころ、夏休みのたびに遊びに行っていた。

どういう経緯だったか前後がはっきりしないのだが、
俺が手に卵を持っていてそして祖父がこう言った。


「それは神様だから渡しなさい」




祖父に卵を手渡すとき、「ギョロ」という、音というか
気配のようなものが卵の中で動いてそれに驚いた俺は
落としてしまった。
割れた卵から真っ黒い毛のようなものが見えて、
それを祖父はすぐに踏みつけた。
嫌な音がした。
俺はその出来事を気にしていたらしく、その次か、
次の次の夏 あたりに祖父が教えてくれた。



28
この養鶏場があるあたりはむかし沼がちだった土地で、
なにかの神様を祭る社があったらしい。
祖父の先代が土地を買い取った時にその社を裏の山に移したのだが
それ以来、ごくまれに無精卵の中に奇妙なものが混ざり始めたそうだ。
それはどういうものなのか、祖父は教えてくれなかったが

「神様」

なのだと言う。
俺はそれを聞いてやたら怖くなって体が震えた。
今にして思うと、「それは神様で、そして殺す」という
文法が怖かったのだと思う。
「悪霊だから、殺す」と言われれば納得したかもしれないのに

祖父の葬式の日、出棺の最中に鋭い笛の音が響いた。
まわりにいた全員が耳を塞いで騒然となったけど、
俺はなぜか心のつかえが取れたような気がした。
説明できないが、納得した。

ごめん。わけわかんないな。






引用: 死ぬ程洒落にならない怖い話集めてみない?