2
母の洋裁の先生が失踪した。
洋裁の先生っていっても近所のおばちゃんの洋裁教室なんだけど。
先生を以下Aさんとします。

Aさんの旦那さんは酒煙草女やらない優しいいいおっちゃんなんだけど
ものすっごいバクチ好き。
お堅い職業だったのに仕事中に競輪場行ってるのがバレてクビになった。
息子は進学する予定だったけど高卒で就職して、
以後はAさんの洋裁教室+息子の稼ぎで暮らしてた。
近所でもAさん旦那のバクチ好きは有名で「あの人のは病気だ~」って
みんなが苦笑いするくらいだった。
子供祭りのくじ引きにすら本気になってお金をつぎこんでしまうので
頃合でおっちゃんらが「もうそのへんで」って止めるようなしまつだった。





3
その旦那が脳梗塞だか脳溢血だかで倒れた。
麻痺が残るそうで熱心にリハビリしないといけないらしいのに
本人まったくやる気なしで、Aさんに頼りっきりだったらしい。
それまで洋裁教室はAさん宅でやってたんだけど
行くと旦那の排泄物の匂いがするんで
公民館のスペースを貸してもらったりしてしのいでたみたい。

そのAさんがある日失踪した。
貯金を半分きれいに落として、自分の物は持っていくか処分するかして
母いわく「すごいきれいな夜逃げ(昼逃げ?)」だったらしい。
相当入念に準備してたなーって感じの逃げっぷりだったとか。
生徒たちのために名指しで型紙を残していったり
準備万端だったそうだ。



4
息子さんは警察に捜索願いを出したけど、子供やアルツの年寄りでなく
自由意志で出て行ける人の失踪だとほとんど捜査なんてしてくれないらしい。

母が言うには息子さんもバクチ好きの予兆が見え始めてたんだって。
「高卒で好きでもない仕事やらされて、これしか楽しみがない」
ってキャッシングしては給料で返し、また借りては…の
自転車操業をやってるのにAさんが気づいて悩んでたそうだ。
「いろいろイヤになっちゃったんだろうね」と母談。

息子は家に寄り付かなくなっちゃって
しかたないから町内会長が役所とか福祉の方に働きかけてるみたいなんだけど
旦那は誰か訪ねてくると不自由な手をピコピコ振って
「競馬新聞買ってきて」って言うらしい。

こんなこと言っちゃいけないんだろうけど、こんな人のために税金使われるのやだ…。







引用: 今までにあった修羅場を語れ【その8】