山口県には、幽霊の掛け軸というものがあります。
この掛け軸の話を。
下関に大変心優しいお菊という娘がいました。
しかし、そのお菊の両親はというと、喧嘩ばかり。
どうにか仲が良くなって欲しいと思ったお菊は、
近くのお寺の和尚さんに相談したそうです。
そしてくる日もくる日も毎日かかさずお寺にお祈りしにいきました。
しかし祈りは届かず、両親の仲は一向に良くはなりません。
いつしかお菊の気苦労は体にまで及び、高熱で倒れてしまいました。
両親が心配し何かほしいものはないかと聞くと、
『何も欲しい物はありません、ただお父さんとお母さんが仲良くしている姿がみたい』
とだけいいました。
しかしお菊の必死の思いも両親に届くことはなかったそうです。
お菊はどんどん具合が悪くなり、そのまま息を引き取ってしまいました。
その夜、お寺にお菊の幽霊が現れ、和尚さんにこのように言ったそうです。
『両親のことを頼みます』
亡くなってもなお両親のことを心配するお菊のその姿を、和尚さんは紙に書き写したそうです。ちょうどそこへお菊が亡くなったことを伝えに、両親がやってきました。
和尚さんは、今しがた亡くなってもなお両親のことを心配して現れたお菊のことを話し、紙に書き写したお菊の姿をみせたそうです。それからというものの、お菊の両親は自分達の過ちに気付き、生まれ変わったように仲が良くなったそうです。そして毎年、お寺ではご本尊様の御開帳の時、お菊の幽霊の絵を出して夫婦仲の大切さを和尚さんが説いて聞かせたそうです。
この御開帳の事を「幽霊祭」と言い、今現在も続くお祭りとなっています。
幽霊祭は、毎年7月17日の18時~21時までの間、永福寺でご開帳されているとのことです。お菊の命日が十七夜観音の縁日だったことから、毎年この日に公開しているそうです。お堂の前で焚かれる線香にあたると無病息災で過ごせると伝えられています。
余談ですが、この記事を書いた今日は7月17日。
記事をあげた時間は18時。
不思議な気がします・・・。