
no.124 ろくろ首
昔、ある武士が、夜明け前のまだ暗い時間、都を目指して道を歩いていた。
そしてさはや野というところにさしかかったとき端に石の塔が建っているのを見つけた。
何気なくその塔を見ながら歩いていると、
塔の上の方からニワトリのようなものが道に舞い降りた。
だがそれは、よく見るとニワトリではなく、女の首だった。
その女の首は、髪を振り乱しながら地面を転々とし、ぎろっと武士の方を睨んだ。
一瞬、目と目が合った後、女の首はケラケラケラと笑い出した。
だが武士の方もひるむことなく
「出たな、化け物!」
と言いながら、刀を抜き、その首めがけて切りかかった。
しかし刀をかわした生首は、そのまま宙に浮き、すうっと、どこかに飛んでいった。
武士も生首の後を追う。